【(4)重度歯周炎】


 歯の周りの組織はさらに破壊され、歯肉は下がり、歯と歯の間のすき間も目立つようになります。歯槽骨はさらに吸収され、X線画像では歯を支える歯槽骨がごくわずかとなります。時には歯肉からは膿や血が持続的に出て、口臭は一層強くなり、歯は大きくぐらつきます。噛む力を支えきれず噛んでも歯の位置が不安定になるので本来の位置から動いて歯並びが悪くなったり、十分に食べ物が噛み切れなかったり、発音に影響が出るようになります。

【最終段階】
 歯を支える歯槽骨をはじめとした歯周組織がほとんど失われるため、大切な土台を失った歯は自然に抜けてきます。

 歯周病は炎症がひどくなるときと一休みする時期を繰り返しながら、進行します。たとえば10代で初期の歯肉炎が発症し、放置しておいた場合でもすぐに重度の歯周炎にはならない場合が多いのです。

 一方、10代、20代で発症し、急速に歯周炎が進行するタイプがあります。侵襲性歯周炎と呼ばれているもので、適切な治療を受けなかった患者さんの中には若くして多くの歯を失ってしまう方もいます。このほか、ダウン症候群などの遺伝的な要因で、早い時期から重度の歯周炎が発症する場合があります。

 いずれの歯周病の治療においても、プラークコントロールを徹底するという基本は一般的な歯周病と同じです。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会/1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会/1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。