【(1)歯肉炎】


 プラークが歯と歯肉のすき間にたまると、歯肉は炎症を起こし、赤く変色し、出血しやすくなります。時には歯肉がむずがゆかったり、触るとぷよぷよしますが、この段階では異変に気づかない人が多いようです。これは歯周病菌を追い出そうというからだの防御反応の炎症です。同時に健康なときは1~2ミリ程度だった歯肉溝(歯と歯肉の間にはもともと1~2ミリのすき間があり、これを歯肉溝という)は歯肉の腫れによって、「歯肉ポケット(仮性ポケット)」と呼ばれる溝(2~3ミリ)になります。

 この段階であれば自分自身のブラッシング(プラークコントロール)をはじめとしたセルフ・ケアの徹底や、歯科医院でプラークが石灰化して固まった歯石の除去(スケーリング)などのプロフェッショナル・ケアを受ければ、炎症はおさまり、元の健康な歯肉に戻すことができます。

【(2)軽度歯周炎】
 プラークがさらに歯と歯肉の間に入り込むと、歯肉の炎症が深いところまで達するようになり、歯肉溝は歯肉ポケットから「歯周ポケット(真性ポケット)」といわれる状態に進行します。歯肉の炎症は継続し、出血しやすい状態や腫れは続き、歯もわずかに動くようになります。また、炎症により歯肉の一部が退縮して本来、歯を覆っていた位置から下がり、歯の根元付近が露出してきます。歯と歯の間の歯肉も下がるのですき間が気になるようになります。歯肉の内側では歯を支える歯槽骨が吸収し始め、X線画像で見ると歯槽骨の高さが低くなっているのがわかります。

 この段階で歯科の治療を受ければ、歯周病は十分に治すことができます。

【(3)中等度歯周炎】
 プラークがさらに根の先の方向に向かって入り込み、炎症はますます広がっていきます。また、歯肉の退縮が進み、歯の根の部分がさらに露出し、歯が長くなったようになる場合もあります。

 ここまでくると多くの人は歯肉の違和感や歯の動きにはっきりと気づくようになります。また、歯と歯の間の歯肉がさらに下がり、すき間が広がり、そこから息が漏れることによって発音への影響も出始めます。その前の段階にも見られる口の中のねばつきだけでなく、口臭などの症状も出てくるために、あわてて歯科医院を受診する人が増え始めます。

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若くして多くの歯を失う人も