では、相手のネガティブな発言によって気持ちがなえてしまったときはどうしたらいいでしょうか?


  
 発言をされた側が、そのネガティブ意見をポジティブ意見に変える努力をするのは、ほとんど時間の無駄になります。そんなときは、「貴重な意見として参考にいたします。ただ、基本的な方針は変わりません」で十分でしょう。 

 相手は、貴重な意見としてゆるく残してもらえることはありがたいと考える可能性が高いと考えられます。仮に問題が起きたときには「自分は反対でした」と言える立場を確保したことにもなるからです。 

 似たようなケースとして、仕事がまとまりかけると反対発言をしてモチベーションを下げてくる人がいます。例えば、自分の提案に大多数が賛成したタイミングで、「そもそもなんでやるんだっけ」「別の視点で考えてみたらどうだろうか?」とまとまりを乱して、別の意見を尊重する方向に持っていく人などです。
 
 一貫した信念を持っているというよりは、会議に出ていて、いろいろな話を聞いていくなかで、自分なりに気づいたことや思ったことがあると、それを言わないでは済ますことができない人ともいえるでしょう。たいていの場合、まとまりそうな状況を揺るがすだけに終始します。

「こうした意見にも応えなければ」という微妙な責任感が周囲を迷わせ、モチベーションを下げることになるのです。このような人の発言でモチベーションを下げられないようにするにはどうしたらいいのでしょうか? 

 ここでも貴重なマイナー意見作戦にしてしまいましょう。自分に関係ないのに反対してくる人に対して、真っ向正面から戦いを挑むのではなく、「貴重な意見をありがとうございます。その意見も参考にして頑張りますので、このまま進めますね」とふんわり受け入れる姿勢だけみせるのです。大事なことはマイナー意見のままで終わらせて、周りを同調させないようにすることです。 

 実は、ネガティブ発言で周囲のモチベーションを下げる人は、全体の意見としてその発言に同調してほしいと願っているわけではないのです。自分の発言を容認してくれた、自分の存在がそれなりに認められたと感じるだけで十分なのです。 

 ネガティブな発言をする人が登場するにはそれなりの理由があります。代表的なものは、自分は損な役回りであることを周囲にアピールしたいというケースです。例えばその人が、理不尽な仕事ばかりやらされ、それでいて評価が低い部署に過去に置かれていたとします。その損な役回りの不満がネガティブな発言となって出ているとすれば、その気持ちは配慮する必要があります。

 このように、ネガティブな発言の裏に潜む背景を深読みすること。くれぐれも、深読み前に攻撃して“モチベーション下げマン”を駆逐しようとは考えない方がいいと覚えておいてください。

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西野一輝

西野一輝

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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