しかし、がんが大きくて切除後に皮膚に大がかりな再建が必要な場合は、入院しての治療となる。とくに顔の手術の場合は見た目の問題もあるので、再建術が重要になる。切除部分の大きさによるが、太ももなどから皮膚をとって植皮する場合もある。

「基底細胞がんや有棘細胞がんは目や鼻の周囲、額など、目立つ部分にできやすいので、再建術が複雑になるケースもありますが、多くは傷痕がわからない程度に修復されます」(錦織医師)

 リンパ節や肺や肝臓などのほかの臓器に転移がある場合は、原発巣の切除と、薬物療法、放射線療法を組み合わせた治療をおこなう。

■ほくろやしみの変化を見逃さない

 皮膚の異常は見つけやすいが、変化があっても放置してしまいがちだ。次のような点に気づいたら、早めに皮膚科専門医を受診することが勧められる。

▼半年前、1年前にはなかった、ほくろやしみ、イボが出てきた
▼ほくろ、しみ、イボなどが以前と比べて、数カ月の単位で大きくなってきた
▼色や形が変わってきた
▼しみ、イボ、傷などがいつまで経っても同じところにあって、治らない
▼最近、じくじくしたり出血したりするようになった

 2018年、人工知能(AI)を用いた診断補助システムが開発された。病変の写真をAIに読み込ませると、良性も含めた約17種類の腫瘍が判別できる。開発に携わった藤澤医師は言う。

「皮膚の病変は最初にかかりつけ医に相談することが多く、その段階で見逃されることもあります。将来的には、スマートフォンで撮影して悪性・良性の区別やおおよその診断がつけられるシステムとして、内科などの臨床の場での活用を目指しています」

 皮膚がんの多くは早期なら完治し、再発率も低いという。自分で見づらいところは家族に見てもらってもいいだろう。大事に至る前に早期発見に努めたい。

 なお、ほかのがんの手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

(ライター・別所 文)

<取材した医師>

神戸大学病院 皮膚科診療科長・教授 錦織千佳子医師
筑波大学医学医療系 皮膚科学准教授 藤澤康弘医師

週刊朝日  2020年6月12日号