「食事や飲みに歩いているという話をまったく聞かなくなったのに……」

 巨人担当記者は坂本の変化とともに、今回のウイルスへの対処の難しさを語る。

「『気分転換しないと野球にも集中できない』と語っていた。また多くの浮名を流しているようによくモテる。お酒も飲めるので多くの誘いも受けるが、年末あたりからそういう話を聞かなくなった。今年の春季キャンプではウイルスの話題も出始めていた。チームへの影響を考えて、食事も繁華街に出ずにホテルで済ませていた。開幕延期が決まってからは、私用での外出はしていないらしい。どんなに注意を払っていてもこういうことがある。厄介なウイルスです」

 オープン戦での無観客試合導入を提案するなど、巨人は早くからウイルス対策の徹底をおこなってきた。その中心として細心の注意を払ってきた坂本が感染してしまった。

「変な意味でアンバサダーの三冠王になってしまった」

 大手広告代理店担当者は、坂本の置かれた現状について斜め目線で解説する。

「各球団とも野球だけの興行収入では限界に達したため、グッズ販売、放映権などの収入を重要視するようになった。巨人も同様で、有名アパレルブランドとのコラボ展開やネット配信に活路を見出そうとしている。その流れの一環として坂本はMLB公式キャップなどを扱うニューエラ社、映像配信会社DAZN社のアンバサダーに就任したばかり。世界的に著名な2社に加えて、ここへ来ての新型コロナウイルス感染。まさに名前を世間に広めるアンバサダーの役割を担ってしまった」

 坂本は3月にニューエラ社、6月にDAZN社のアンバサダーに就任したばかり。共に球界そして巨人を盛り上げて行こうとしていた矢先、ウイルス感染してしまった。

 また、今シーズンは大記録更新にも挑戦するはずであった。

 昨年まで1884安打を放っており、2000本安打まで残り116本。史上最年少での達成が目前だった。これまでの記録は68年、榎本喜八(東京)が達成した31歳7カ月16日。坂本が更新するためには、7月29日までに残り116安打で可能性十分であった。しかし開幕延期となり、坂本の記録達成の実現可能性は、消失したに等しい。

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坂本にとっては、更なる成長の機会?