「わがまま」だと嫌われると思っている人は多い。しかし、サイボウズ社は、社員一人ひとりの「わがまま」に耳を傾けることで、離職率を7分の1に下げ、売り上げを4倍に伸ばすことに成功したのだ。その理由を社長・青野慶久氏は、「わがまま」こそが「新たな社会を創り出す原動力」だからだ、と教えてくれた。その真意を、サイボウズチームワーク総研著『「わがまま」がチームを強くする。』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。

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■公明正大にわがままを伝えて、仲間を募る

 サイボウズの拠点は、いま全国的に広がっています。大阪や松山、福岡にもできました。どこも、社員が「ここに行きたい」とわがまま(希望)を言ったからできただけで、いわゆる会社の命令による転勤ではありません。

 サイボウズ社長の青野が「次はあそこがいいんじゃないか」と耳元でささやくことはあります。たとえば、青野は数年前から「北欧に拠点があったらいいと思わないか」と提案し続けています。

 ところが、共感して「行きたい」と手を挙げる社員がまだ出てこない。そのため、いまだに実現していません。

 普通の会社であれば、社長命令で北欧転勤が即決まるでしょうが、「共感なく嫌々やらせるのは犠牲を強いること」というのがサイボウズの文化ですから、それはあり得ない。ようやく最近になって、「北欧に出張したい」という社員が出てきて、青野も少しホッとしています。

 もちろん、社員が無視しているのではありません。社員は疑問に思ったことを質問する「質問責任」を果たしているし、青野も「説明責任」を果たしています。それでも動かないのは、なぜか。その提案が「共感を得られていない」から、というのが答えです。

 青野は、共感してくれる人を求めて、自分のわがままを社員だけでなく、社外の人も含めて、いろんな人に伝えています。青野の最終的なわがままは、企業理念として示しているように、「チームワークあふれる社会を創る」ことです。そのためには、そのわがままに共感してくれる仲間をどんどん増やしていく必要があります。だから、徹底的に情報をオープンする。公明正大にわがままを伝えて、いつも仲間を募っているのです。

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「わがまま」を言うほど「褒められる」会社とは