「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりましたが、その原因は、歯周病菌による感染です。放置すると気づかないままに進行して、ある日突然、歯が抜けてしまいます。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会による、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』から一部を抜粋して紹介します。

【図】プラーク以外にもこんなに!歯周病のリスクファクター

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 恐ろしい歯周病の原因は、歯に付着した細菌の塊である「プラーク」です。

 プラークはヌルヌルした付着物で、有機物や細菌によって膜状に形成されていることから「バイオフィルム」とも呼ばれます。プラークはブラッシングなどの機械的清掃で落とす必要があります。

「歯磨きをしない」「しているつもりでも磨けていない」と、その日からプラークの形成が始まります。歯磨きの直後から歯にはペリクルという唾液由来の物質からできる被膜が形成され、ここに口の中に棲んでいるむし歯の原因菌、ミュータンス菌などが付着します。ミュータンス菌などの細菌は糖などを使ってネバネバした物質(グリコカリックス)を作り、自分たちの棲みやすい環境下で数を増やしていきます。これがプラークです。

 このプラークを除去せずに放置すると、1週間を過ぎる頃、ミュータンス菌だけでなく、空気の少ないところが好きな他の菌も棲みつくようになります。この多くが歯周組織に悪さをする菌(歯周病菌)なのです。つまり、時間がたつにつれ細菌叢の中にさらにほかの細菌が棲みつくといったことが繰り返され、プラークは成熟し、さまざまな細菌の巣窟(バイオフィルム)になります。つまり成熟したプラークは歯周組織に悪い影響を及ぼします。

 歯周病の原因と考えられる菌は、これまでたくさんの種類が見つかっています。このうち、歯周炎の患者さんに多く見られ、特に悪質な菌といわれる3種類が「P.g菌(Porphyromonas-gingivalis, ポルフィロモナス・ジンジバリス)」「T.f菌(Tannerella forsythia,タンナレラ・フォーサイシア)」「T.d菌(Treponema denticola, トレポネーマ・デンティコラ)」です。

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悪質な菌の中には全身の病気にかかわる原因菌も