京都と大阪で付き合っていた頃は、ボクが彼女の家に入り浸っている状態だったから、ボクには帰る家があった。でも東京では、逆に彼女がボクの家にきたという形だった。一緒にいることには変わりないけど、この変化がボクとしては大きかったんだよね。



 自分の家なのに、自由がないというか、部屋で友達と電話していても彼女に聞かれてるんじゃないかって思ったり、自分の好きなタイミングで寝られないとか、芸人の先輩と気軽にご飯にいけないとか、少しずついろんなことがストレスになっちゃんだ。

 ボクも東京に来たばかりで、右も左も分からない状態で、とにかく仕事も交友関係も必死だった影響もあると思う。

 結局、ボクらは別れてしまった。結婚に対して、「憧れ」だけで行動しちゃったのがいけなかったなって反省もしたよ。

 2度目は、ボクが30歳の時。当時の彼女は28歳。その子は、ボクはこれまで知り合った女の子とは全然違ってた。

 それまでボクが付き合ったり、好きになった女の子は、個性的でクセの強い子が多かったんだけど、その子は、つねに一歩引いて、ボクの事をたててくれるような存在だった。

 1度目の失敗を生かして、結婚をよりリアルに考えていたボクにとって、彼女はすごく理想のタイプだったよ。彼女が30歳になるタイミングで結婚したいねーなんて、口約束だけど話したりもしていたし、団長の結婚式にだって、同席してもらったりもしたの。

 でも、そんな彼女ともうまくはいかなかった。

 ちょうどその頃、安田大サーカスの活動は少し低迷期を迎えていて、仕事もだんだん少なくなっている時期だったのが大きいね。このまま家庭をもって、落ち着いてしまったら芸人として良くないって思ったし、何より、ボクは自分一人の収入で、奥さんや子供を十分養えるくらい稼ぐ男になりたいって思いが強かったから。

 だから、ボクは彼女に「30歳になるタイミングでの結婚」は「もう少し待ってほしい」って伝えた。当然、彼女は「どうして?」「もう待てない」って言ってきた。今思えば、ボクもちゃんと話せばよかったんだけど、仕事が減ってきているなんて、彼女に言えなかったから、変に理由をはぐらかしちゃったんだ。

次のページ