行政がお墨付きを与えた女性の労働力=男性の0.8という数字。そこには、男性医師の多くに、彼の衣食住を支える「専業主婦」がいることも考慮されず、ただただ女性が「産む性」であるために、差別が正当化されてしまっている。そして、こういう「考え方」は、決して医療界に特化したものではないのだろう。

 安価な労働力として使われる非正規雇用のほとんどが女性である現実。そしてそういう立場の人たちこそが、ウイルスのリスクにさらされてしまう過酷。医療現場でも看護師はほぼ女性が占めている。男性と同じ社会的地位、同じ給料、同じ特権を求めることができない女性ジェンダー化された職種もある。介護、保育……といったケアの仕事も、決して高所得ではなく、テレワークのできない仕事で、主に女性に担われてきた。多くの職場の隅々に、性差別が行き渡っている。

「今、この建物、女性しかいなくないですか……?」

 性差別の実態はホラーなのだと思う。恐怖ギリギリ、いつ絶叫が放たれるか分からない緊張状態だ。安倍政権は、「女性を輝かす!」と軽々しいアピールをしてきたが、女性は磨くものではない。男性が邪魔をしないように、職場環境や男性の古い考え自体を新しく磨きなおすべきなのだ。

 コロナ禍で日本のホラー状態に気づかされた人は少なくない。変えていくために一歩一歩、磨かせてもらおう。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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