スポーツ界も似たような状況である。長年、プロ野球などを取材するスポーツ紙記者は語る。

「かつてのプロ野球選手名鑑には選手の住所などすべて載っていた。ファンは家まで会いに行けた。ダメな選手には自宅前で暴言が浴びせられ、カミソリ刃などが送られて来ることもあった。だから選手を守るために住所記載がなくなった。そういう盲目的ファンが、最近はSNSなどで選手に誹謗中傷を浴びせている。今回の木村さんはプロレス・ファンだけでなく、番組を見た一般ユーザーからも常に攻撃されていた」

 個人情報を保護する法律の成立などで、個人のプライバシーへの意識は高まっている。しかしネットという公の場では、人権が軽んじられていると感じる場面が多々ある。

「周囲がアスリートやタレントを大事に扱うべきだ」と語るのは、多くの競技を取材するスポーツライター。

「本来はパフォーマンスに対してファンがつくもの。客商売だからサービスも重要だが、主客転倒しているというのを見かける。例えば、今年ロッテに入団した佐々木朗希はプロでは1球も投げていない新人。球団が売り出したいのはわかるが、野球以外の露出が多すぎる。佐々木の場合、高校3年時の決勝戦登板回避のこともある。結果が出なかった場合、ネット中心に大きな非難にさらされるのが目に見えているだけに心配です」

 佐々木は東日本大震災で父と祖父母を津波で亡くした経験がある。また前述の決勝戦登板回避は社会問題になったほど。多くの困難を乗り越えたストーリーは多くの人の心に刺さる。そのため開幕延期中、多くの媒体に登場してきた。しかし百戦錬磨のプロの世界、壁にぶつかることも必ずあるはず。その時には世間からの壮絶な逆風も予想される。

「球団、団体やプロダクションなどは露出を増やし、ファンを増やしたい。その先には広告獲得なども見えて来る。ビジネスも大事だが、演じるのは1人の人間であることを考えて欲しい。例えば、ダルや本田などは国内外で多くの実績を残してきた。たとえ、うまくいかず他人から批判されても、己を信じて乗り越えるだけの自信や自負を作り上げ持っている。そういう人たちは前述のようなコメントを出せるだろう。しかし人生これからの若者に、それらすべてを求めるのは酷。周囲の『大人』が考え、導いてあげないといけない」

 前出のスポーツライターは、「SNSでの情報発信などもそこに含まれる」としたうえでアスリートや芸能・著名人個人のブランドや人権を訴える。

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アスリートなどとの交流方法を再考すべき時?