(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)

「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりましたが、最新の研究では、歯周病は歯や口の中だけでなく、全身の健康とも大きくかかわっていることが分かってきています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、最新研究をもとに、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から抜粋して、「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)」「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」について紹介します。

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■歯周病菌がアルツハイマー病を悪化させる!?

 歯周病が認知症の危険因子となる理由は、歯を失うことが大きいといわれてきました。しかし、アルツハイマー病に関しては歯周病菌が直接、影響を及ぼしている可能性が多くの研究で明らかになってきています。

 国立長寿医療研究センターと松本歯科大学の共同研究では、P.g菌を投与したアルツハイマー病のマウスの認知機能は、投与しなかった群に比べ、著しく低下したことが確認されました。さらに脳を調べると、アルツハイマー病の発症に関与しているアミロイドβタンパク(Aβ)の沈着の増加、炎症物質や歯周病菌など細菌が作る毒素の増加が確認されました。

 海外では、P.g菌が産生する「ジンジパイン」というタンパク質分解酵素を阻害することにより、神経の変性やアミロイドβタンパクの蓄積を減らす効果が報告されています。さらに、この阻害薬をアルツハイマー病の患者さんに投与する臨床試験がおこなわれています。今後の研究が期待されます。

≪まとめ≫
・歯周病菌がアルツハイマー病の脳に直接または間接的に、悪さをしている可能性がわかってきた
・海外でアルツハイマー病の患者さんに歯周病菌の病原因子の阻害薬を投与する臨床試験がおこなわれている

■歯周病は肝臓にも影響! 非アルコール性脂肪肝炎「NASH」の原因に

 中高年に多い脂肪肝は中性脂肪が肝臓に多く蓄積される状態です。脂肪肝というと「アルコールの多飲」というイメージがありますが、最近、問題になっている「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」はお酒とは全く関係がなく、脂肪肝と診断される人の10~20%に見つかります。

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NASHの危険因子に歯周病菌の関与が明らかに