そのつど、思ったことを口にし、やりたい曲を作るというスタンスなのだろう。私生活でも、吉高由里子や前田敦子らと浮名を流しており、けっこう自由奔放にも見える。おそらく、思想よりも感情を大事にするタイプで、朝ドラ出演もまたしかり、なのではないか。

 では、肝心の演技はといえば、それなりに面白い味を出している。主役を演じる窪田正孝の芝居にメリハリが効いている分、淡々とそっけない素振りが好対照だ。興味深かったのは、視聴者の感想のなかに、岸部一徳みたいになるかもと期待しているコメントを目にしたこと。たしかに、ミュージシャンから個性派俳優になっていく人はいつの時代も存在する。野田が今後、そういう方向に進む可能性もなくはない。

「影を慕いて」を歌った前々回には「ちょいちょい愛してる」という詞に即興で曲をつけ、それがファンにウケたことから、インスタライブでも披露していた。こういうお調子者っぽさは、役者にも向いているはずだ。

 この曲(というか「ちょいぽい恋唄 第二」のなかの一節)はミョーに耳に残ると評判だが、彼の演技もミョーに印象的だったりする。

 役者・野田洋次郎、意外といけるかもしれない。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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