恐らく、彼らが普段のテレビ出演で得ている金額をはるかに上回る額が、ラファエルに出演料として支払われていたことに心底驚いたのだろう。テレビに1回出るだけで400万円というのは、テレビ業界の相場としては確かに高い。

 だが、逆に言うと、YouTuberやコンサルタントとして時給100万円以上を稼ぎ出すラファエルを収録で数時間拘束するのだと考えれば、妥当な数字でもある。そんな金銭的な待遇の圧倒的な違いを見せつけられたことで、吉村をはじめとする出演者たちはただ驚き、あきれるしかなかった。

 さらに、19日放送回では、ラファエルがYouTuberとして具体的にどのように稼いでいるのかを語っていた。動画の中で商品を紹介して企業から広告料を受け取る「企業案件」と呼ばれる仕組みがある。報酬は1件につき最低500万円というのが相場だという。彼は2017年度には企業案件にかかわったYouTuberランキングで1位に輝き、62社の会社と仕事をしていたという。

 これを聞いた若林はうなだれて「何のために10年ショーパブ出てたのかな」「テレビってもっとすごくなかったか?」とつぶやいた。ラファエルが稼ぎ出す桁違いの収入額は、夢を求めて芸能界入りした彼らを意気消沈させるのに十分なものだった。

 少し前までは、テレビのバラエティ番組にYouTuberが出ると「インチキな商売で一発当てた成金」という扱いをされることが多かった。身の丈に合わない富を得て、豪邸で贅沢な暮らしをしているところばかりが取り上げられた。裏を返せば、ただお金にしか注目されないくらい、YouTuberが世間から見下されていたということでもあるし、テレビの制作者側も彼らをどう扱っていいかわからなかった、ということでもある。

 でも、最近はそれが変わりつつある。YouTuberが1つの職業として認められてきている。YouTuberが古くからある芸能事務所に所属するケースや、テレビタレントがYouTubeに参入するケースも相次いでいる。

 さらに、お笑い最大手の吉本興業とYouTuber事務所最大手のUUUMが資本業務提携をすることも発表された。芸能界とYouTuber業界が手を組み、お互いのノウハウを積極的に学ぼうとしている。

 営業職として会社勤めをした経験もあり、多角的に事業を経営していてるラファエルは、テレビカメラの前で理路整然とYouTubeビジネスの現実を伝えた。それは若林、吉村ら一線級のテレビタレントをも驚かせる内容だった。開いた口が塞がらない様子の彼らを映し出すことを通して、テレビの面白さと限界が同時に示されていた。

「テレビか、ネットか」という中身のない二元論はバカバカしいだけだが、テレビとネットが距離を縮めてお互いのことを知ろうとする様子はそれだけで刺激的なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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