見知らぬ人に対する警戒心を解くには、見知らぬ人とよく会う環境に身をおくことが有効です。学生に相談されたときには、街行く人々にインタビュー調査をしたらどうかとすすめます。インタビュー調査には経験のある先輩と組んで行くのがよいです。最初は先輩のやり方を見て学び、だんだんと自らできるようになっていき、人見知りも解消します。

 あまりオススメできない「人見知り解消方法」もあるので、注意が必要です。「自分に自信があることを人前で表現すればよい」という方法です。これを実行するのは、かなり冒険です。

 たとえば、縄跳びに自信がある人が、人前でそれを行ったとしましょう。うまくいけばいいのですが、緊張して失敗したり、自分でうまく行ったと思っているのにウケが悪かったりしたらどうでしょう。人見知りが解消できないばかりか、それまでの自信も失われ、問題が膨らんでしまいます。

 人見知りの解消は、あいさつのように誰でもできることを、まず人前で行うことです。「見知らぬ人も危険でないな」と心から実感できれば、恐怖も小さくなります。人前での表現はその後にすべきです。

 ちなみに幽霊が怖いのも、人見知りと関係があります。仲よしだった亡き祖母の幽霊が出てきたと想像してみてください。懐かしさが大きく、それほど怖くはないですよね。幽霊は見知らぬ人だから、怖いのです。幽霊をよく見るという人がいれば、幽霊に慣れているので、もう怖くはなくなっているはずです。

 だから、暗い小道に幽霊が出ても、「見知らぬ“人間”でなくてよかった」と思えれば、怖さは半減でしょう。幽霊になぐられたり物をとられたりしたなどの話は、とんと聞きません。幽霊でなく本物の凶悪犯だったならば、そのほうがずっと危険なのです。

 見知らぬ人を克服することは、人見知りだけでなく、いろいろな恐怖を解消することにつながります。ぜひ努力してみてください。

【今回の結論】人見知りは、見知らぬ人に対する恐怖心の表れ。見知らぬ人と会う環境に積極的に身を置くことで、恐怖を克服するようにしよう。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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