今回の検察庁法の改正は、「指揮権を裏で発動している」ことに他なりません。なぜなら、政権に近い黒川氏を検事総長に据えることで、指揮権を発動しなくとも、検察官が政権の意向に忖度するようになりかねないからです。

 このコロナ禍に、法案成立を急ぐのは、河井克行議員と妻・案里議員に捜査が及んでいるからでしょう。広島地検の捜査を牽制したいという安倍首相の思惑が透けます。そして今回、「定年延長」を設けることで、黒川氏に限らず、今後も検事総長や検察幹部に政権に近い人を座らせることができる。これで、自分たちにとって都合の悪い捜査は止めることもできるわけです。

 今回、たくさんの人々が「これはまずい」と抗議の声をあげた。これは正常な市民感覚だと思います。時の政権が検察人事に介入することが、市民の権利や自由にも影響をおよぼすことを見抜き始めたのだと思います。(構成=AERA dot.編集部・井上啓太)