だが、1月頃から中国国内で新型コロナウイルスが猛威をふるい、2月にはツアーの中止が相次いだことを受け、客足が一気に途絶えたという。

「改めて、ここが観光地なのだと思い知ったよ」(同前)

 中国人が激減して、すでに4カ月目。来月も売り上げが回復しなければ、半年近く収入が落ち込むことになる。4月の休業要請後に収入が途絶えたナイトクラブや居酒屋よりも影響は長期に及ぶことになり、事態は深刻といえる。

「来月もだめだったら立ち行かない。ほとんどの店がつぶれるんじゃない?」(同前)

 吉原のメーンストリートと言われる「仲之町通り」も、通行人はほとんどいなかった。営業しているソープ店の社員はこう明かす。

「客の3割以上が、中国などアジア系のお客さんでしたからね。2、3年前からかなり増えて、売り上げを支えていた。それが今はゼロ。かなり厳しいですね」

 通りを走っていた流しのタクシー運転手も、一向に客が入らない状況に肩を落とす。

「コロナがはやる前は、中国人はかなり多かったですね。吉原から、日暮里や上野まで飛ばす場合が多くて、かなり稼げていた。今は流しの台数が減って競合が少なくなったけど、それでも稼げない」

 2時間ほど歩いてみたが、客とおぼしき人とすれ違った回数は、十にも満たない。本来であれば昼間でも中国語が聞こえてくるというが、日本語さえも聞こえない。

 吉原の事情に詳しい「扇情カメラマン」の酒井よし彦氏によると、最初に中国人が増え始めたのは5、6年前だという。

「10年ほど前までは、外国人はほとんどいませんでした。いても、出張で来日した欧米人が接待で使用する程度。ところが5、6年前に『爆買い』が取り沙汰された時期から、中国人が増え始めました」

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外国人も日本人もいなくなった街に