大企業だけではなく、個人商店であっても同じです。例えば、ケーキ店がお菓子づくりのレッスンをしたり、洋品店がパーソナル・スタイリストのサービスを提供したりすることで、「経験のための場所」になれるのです。

 コロナ危機で明らかになったことは、極めて不確実性の高い世界にあって、デジタル技術はリテールの大きな武器であるということです。デジタルトランスフォーメーションは、コロナ危機によって一気に加速しつつあります。私は総務省の方などとテレワークの研究会を続けてきました。今年の1月までは、「日本ではなかなかテレワークが広まらない」という感覚がありましたが、今回の危機によって一気に普及しました。Eコマースの拡大やテレワークの普及など、デジタルトランスフォーメーションは、もはやあらゆる企業が避けて通ることのできない大きな流れとなっています。

 かつてない勢いで進むデジタル化を好機と捉えて、リテール戦略をいかに革新させていくか。アフター・コロナの時代において、リテール戦略の見直しは、さらに重要になってゆくはずです。

(取材・構成/久保田正志)