1987年4月1日の国鉄分割民営化ののち、JR西日本は1988年3月13日ダイヤ改正で夕方以降にも「新快速」を設定し、通勤輸送も担うようになった。さらに1989年3月11日ダイヤ改正では朝ラッシュ時にも設定されたほか、JR西日本初の新型車両となる221系を「新快速」に投入。転換クロスシートの客室や大きな窓と明るいインテリアに加え、乗降扉を2扉から3扉に増やして混雑時の乗降性を高め、利用客から好評を博す。

 その後もスピードアップ、停車駅の増加、運転区間の拡大により、利便性がますます向上。一方、並行私鉄は運賃値上げが相次ぎ、運賃格差が縮小。神戸方面と京都方面を直通できるメリットも相まって、JR西日本に乗り換える人々が増加した。

 さらに1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震で、JR西日本がいち早く完全復旧すると、朝夕ラッシュ時の大阪~姫路方面間に臨時「新快速」を設定。定期「新快速」を合わせ、同区間では8分間隔で運転された。のちに定期化されて、「新快速」はベッドタウンエリアの拡大にもつながってゆく。

■快適に座って移動できる有料座席「Aシート」登場

 現在、定期の「新快速」は最高時速130キロの223系1000・2000番代、225系0・100番代で運転され、米原・近江今津~姫路間は12両編成を基本としている。

 需要の増加による着席ニーズに応えるべく、2019年3月16日から有料座席「Aシート」が連結された。座席はリクライニングシートを採用し、大型荷物置き場を設け、より過ごしやすい空間を創出した。1日2往復ながら好評を博しており、コロナ禍までは満員御礼の日々が続いていたことだろう。JR西日本は225系144両の増備を発表しており、「Aシート」連結列車の増発に期待したい。(文・岸田法眼)

岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)。