■JR発足以降徐々に衰退

 だが、JRグループが発足した頃から「ヘッドマーク」は徐々に衰退するようになる。JR東日本が登場させた初の特急型電車651系は、列車名を掲出する表示器にLEDを採用、文字主体の表示となる。1988(昭和63)年に登場したJR九州の783系は愛称名表示器そのものの設置が見送られている。国鉄の車両には統一された規格が存在したのだが、新生JRはそれぞれが独自の設計を指向。それまでの種別表示器はデザイン上の制約と見なされたのか、徐々に設置自体が敬遠されるようになっていく。

 それでも平成一桁時代までは、JR北海道のキハ281系、JR東海の383系など幕式の列車名表示器を採用する車両も存在しており、新イラストが登場することもあった。だが、表示器自体は小型化が進み、絵柄もシンプル化が進行。国鉄時代のものとはデザイン的な統一感もなくなっていく。そして、21世紀の声を聞く頃には、ヘッドマークを設置する列車自体は目に見えて減少していくことになる。

 JR発足以降は「ブルートレイン」を含む夜行列車もじわじわと衰退。その結果、「ヘッドマーク」「テールマーク」も減少していった。

 2020(令和2)年2月現在、国鉄時代に採用されたイラストヘッドマークが残存する特急は、「踊り子」「やくも」のみである。JR東海の383系やキハ85系、R四国のキハ185系やキハ2000系でも掲出が続けられているが、いずれもJR発足以降のデザインで、国鉄時代のイラストよりは簡素なものとなっている。このほかのイラストヘッドマークが残存している列車でも、JR北海道の「スーパー北斗」のように、列車名はローマ字(アルファベット)表記のみ、イラストも車体の雰囲気にあわせたデザインを採用するケースが多い。

「踊り子」「やくも」で最後の活躍を続けている国鉄ヘッドマークだが、いずれも使用車両の置き換え計画が発表されている。国鉄時代の事物が次第に失われつつあるなか、イラスト入りヘッドマークも時代の波に飲まれて無くなる日が近づいている。(文・鉄道ライター/川崎俊哉)