■客車特急やディーゼル特急、急行列車にも拡大

 1978(昭和53)年10月時点でイラスト入りヘッドマークが採用されたのは電車特急のみ、さらに幕式(ロール式)の列車名表示器を有する形式に限られていた。交直流電車では485系の200番台、300番台、1000番台、1500番台、489系、581・583系、直流電車では183系、381系などに限られていた。

 581・583系は夜行列車の「ゆうづる」「はくつる」「明星」「あかつき」などに使用されていたため、一部の夜行列車でもイラスト入りヘッドマークを見ることができたのだが、この時代はイラスト入りヘッドマーク=昼行特急というイメージが強かったのも確かだ。
 
 電車特急のイラスト入りヘッドマークの成功に気を良くした国鉄は翌1979(昭和54)年7月1日、小幅なダイヤ改正の実施に合わせて、「ブルートレイン」(客車寝台特急)にもイラストマークを採用した。特急電車の場合、マークは前後の先頭車に掲出されるものの、その呼称は客車列車牽引機に掲出する場合と同様に「ヘッドマーク」とされていた。客車の場合も編成の前後に掲出されるものの、前位の客車には機関車が連結されるので目につきにくい。そのため「ブルートレイン」の客車で掲示されるマークは「テールマーク」と呼称されることになった。その後、「テールマーク」は特急のみならず、一部の客車急行列車でも採用が進む。
 
 その後もイラスト入りマークの掲出列車は拡大、1985(昭和60)年頃までに着脱式の愛称板を使用するボンネットタイプの電車特急や、ディーゼルカーを使用する特急列車にも採用されている。この時期、東北・上越新幹線の大宮暫定開業、上野延伸開業と全国的な特急列車網の再編が立て続けに行なわれていたが、特急列車が新設されるたびに新たなイラスト入りヘッドマークが登場し、ファンの眼を楽しませていた。1984(昭和59)年1月以降、合理化のために廃止されていた、東海道・山陽本線以外の区間を走行する「ブルートレイン」ではヘッドマークも掲出が段階的に復活。国鉄分割民営化を直前に控えたこの時期、イラスト入りの「ヘッドマーク」と「テールマーク」は国鉄のイメージアップの切り札としての役割を担っていたことが理解できる。

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JRになって「ヘッドマーク」は衰退していく