■1歳児6人を1人で面倒みる……保育士の現状

 保育士一人が受け持つことができる子どもの人数は、国に決められています。1歳の子どもなら6人に対して必ず1人以上の保育士がつかなくてはなりません。4歳児なら30人につき1人。つまり、もしたった1人の保育士がいなくなったら、30人の4歳児が受け入れ不可能になってしまうのです。

 厚生労働省が発表した、2018年11月の保育士の有効求人倍率は3.2倍(東京は6.4倍)でした。現在は学校が休校になったことで、小さい子どもがいる保育士は仕事を控えざるを得なくなり、倍率はさらに上昇しているでしょう。とにかくどこも保育士が足りていない状態にあり、県や市に「保育士を派遣してほしい」と頼んでも、難しい、という渋い返答しかもらえないとのこと。

 1歳児をたった1人世話するにも、体力と気力をすさまじく消耗します。それなのに1歳児6人を1人で一気に面倒みるなんて、とてつもなくヘビーな仕事でしょう。走り回ってあちこちぶつかって転ぶし、うまく言葉が話せないためすぐに友達とけんかをしてしまうし……危険な行動をしないよう、常に目を光らせていなければなりません。

 そうした子どもたちの対応をしている間に、別の子がご飯や飲み物の容器をひっくり返したり、オムツを替えなければいけない子が出てきたり、 突然泣きだす子も出てきます。保育という大変な仕事を、人数がギリギリの状態でこなしてくれている保育士さんには、頭が下がる思いです。

 そんな保育士さんたちに子どもを預けるとき、コロナを心配する親たちは、「咳(せき)をしている子はいないでしょうか?」「熱を出している子は?」なんて言葉をかけるそうです。「なるべく接触させないよう気をつけて遊ばせてください」という、無茶な要望をしてくる人もいるとか。

 ささいな言葉のように聞こえるかもしれませんが、新型コロナウイルスが蔓延している現在、こうした発言は保育士の疲労をじわじわと増大させていきます。

 考えてもみてください。コロナの感染を防ぐためには、人との間を2メートル開けるべきだという 目安が報じられました。果たしてそれが、保育園の中で可能かどうか。

 小さな子どもたちが2メートルずつ開けて、お利口にじっとしていられると思えるほうが、どうかしています。保育園に預けるということは、イコール濃厚接触を避けられないということ。そしてそれは子どもたちだけではなく、そこで働く保育士も同様なのです。

 周囲の話を聞く限り、保育士は、今は熱があっても、体がきつくても、代わりがいないために休むことができず、無理にでも出勤しているのだそうです。

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