「尊敬するイチローにも一目置かれている。伝説的な選手に少しでも近づけるように、安打1本へのこだわりを強く持っている。だからこそ(NPBでの)2000本安打達成への思いは強かったはず。これまで以上にトレーニングに集中するオフを過ごしていた。今回の出来事は若手選手の意識の低さで起こったこと。そこで福留が出なければいけなかったのはどういうことなのか」(前出のスポーツライター)

 現在1897安打を放っており2000本まではあと103本と、順調に行けば確実な数字。またそれ以外にも通算400二塁打まであと6本、1000四球まであと29と多くの記憶達成が可能な年。野球に専念させてあげたかった、というのが周囲の本音だ。

 高校時代は名門・PL学園でキャプテンをつとめ、WBCなど国際試合も数多く経験。チームの勝利が最優先されるMLBでもプレーしただけに、組織への忠誠心や献身は誰よりも強い。

「孝介は責任感の塊のような男。打撃記録が取り上げられるが、チームのことを最も大事にしている。今回、3人の若手選手のこともずっと心配していた。球界での自分の立場も理解しているので、ひとはだ脱いだのでしょう。誰もが野球に集中できるよう、チームのことを考えて自ら行動した。究極の自己犠牲であり頭が下がります」

 阪神球団関係者は福留に対して感謝の気持ちしかないという。

 福留の今回の謝罪はチームを思う本気の行動であったのは間違いない。しかし阪神球団にも思惑があったのでは、と前述の阪神担当記者。

「球団としてはコロナ感染問題の鎮静化を熟考していた。福留からの謝罪をしたい趣旨の申し出があった際、静止するのではなく積極的に場所を作った。打撃記録更新がかかり注目度の高い一流選手を前面に押し出すことで、球団内の反省度をアピールしたかったのではないか」

 主力選手とはいえ、トラブルと無関係な選手が謝罪するのは考えられないこと。福留の謝罪は球界やファンに対する阪神球団のアピールに過ぎず、騒ぎが沈静化するのを待っていると思われても仕方ない。

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注目したい福留の記録への挑戦