ホワイトソックスは昨年もメジャーデビュー前のイーロイ・ヒメネス外野手と6年総額4300万ドル(約46億円)で契約。ドミニカ共和国出身のヒネメスは昨季に122試合の出場で打率2割6分7厘、31本塁打、79打点と期待に応えており、球団としてはロバートもヒメネス同様に数年後により大型の契約を結ぶことを避けるためにメジャーデビュー前のタイミングで長期契約を結んだに過ぎない。たまたま彼がキューバ出身だったというだけの話だ。

 もっともロバートや、昨季にアストロズでメジャーデビューして87試合で27本塁打を放ったヨルダン・アルバレスのように若いキューバ人選手の活躍が相次げば、かつてのプイグたちのような実績あるスター選手との大型契約という形ではなく、青田買い的にキューバの若手選手の人気が高まることはあり得る。

 キューバから亡命せずともメジャーでプレーでの可能になるようにメジャーリーグ機構とキューバ野球連盟の間で2018年12月に締結した協定は、トランプ米大統領が却下したと2019年4月に報じられた。キューバ人選手のメジャー移籍が今後はどのような形になるかは定かではないし、そもそも新型コロナウイルスの影響でメジャーリーグはまだ開幕のめどが立っていない。

 1994年からシーズンをまたいでストライキが続いて以来の苦境にあるメジャーリーグだが、ストライキ明けの95年にメジャー人気復活にひと役買ったのは日本からメジャー移籍を果たしてトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄だった。もしかしたらコロナ明けのメジャーリーグを救うのは、ロバートのような若いキューバ人選手たちかもしれない。ともあれ、出身国問わず新たなスター誕生を見届けられるような日々が一刻も早く訪れることを願うばかりだ。(文・杉山貴宏)