飛躍が期待される巨人の宮国椋丞 (c)朝日新聞社
飛躍が期待される巨人の宮国椋丞 (c)朝日新聞社

 今年のプロ野球で注目のルーキーといえばやはり佐々木朗希(ロッテ)と奥川恭伸(ヤクルト)の二人になるだろう。高校卒ということもあって、両投手とも無理はさせない方針でトレーニングを続けているが、近い将来チームのエースとして大きな期待がかかる。しかしその一方で入団当初は二人のように大きな期待を受けながらも、なかなかプロでは殻を破り切れないでいる投手も少なくない。今回はそんな“万年エース候補”の投手について取り上げたい。

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 佐々木、奥川のように高校卒で大きな期待を浴びた投手でいうと真っ先に思い浮かぶのは安楽智大(楽天)だ。2年春に出場した選抜高校野球で早くも150キロを超えるスピードを連発し、チームの準優勝に大きく貢献。続く夏の甲子園では155キロをマークし、大会終了後には2年生ながら高校日本代表にも選ばれている。翌年のドラフト会議では2球団競合の結果、楽天に入団。1年目に早くも一軍で初先発、初勝利をマークし、2年目には15試合の登板中12試合に先発して3勝を挙げるなど、順調にエースへの階段を上っているように見えた。

 しかしその後低迷し、ここ2年間は0勝のシーズンが続いている。ネックとなっているのは故障の多さだ。毎年オープン戦では良いピッチングを見せながら、開幕直前に離脱するということを繰り返している。ただ今年は昨年10月に右肘のクリーニング手術を受け、ここまで順調に回復していると報じられた。チーム事情を考えると、抑えの松井裕樹が先発に転向し、実績のある涌井秀章が加入するなどローテーション争いは更に厳しくなっている。ただ涌井、則本昂大、岸孝之とベテランの候補が多くなっていることも確かだ。チームの将来のためにも、安楽の奮起は非常に重要なポイントと言えるだろう。

 同じ高校卒のドラフト1位投手では小笠原慎之介中日)ももどかしいシーズンが続いている。高校時代は下級生の頃から本格派サウスポーとして評判で、3年の夏にはエースとして全国制覇を達成。その年のドラフトでは外れ1位ながら競合となり、中日に入団した。プロ入り1年目は2勝、2年目には5勝と成績を伸ばし、3年目には開幕投手も任されるなど、抜擢の遅い中日の中でも順調に成長しているように見えたが、昨年はわずか3勝に終わり首脳陣の期待を大きく裏切るシーズンとなった。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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