「この治療の特徴は、徐々に症状が治まっていくところで、患者さんに聞くと1~2週間後から効果を感じ始めるようです。もちろん、最初は痛みが気になる人もいるので、そういう方には、鎮痛薬を併用します」(同)

 では、どういう人がこの治療を受けられるのだろうか。医療機関によって多少の違いがあるが、次の条件を満たす必要がある。

○20~70歳(原則として)
○テンションサイン(ひざを伸ばした状態で足を持ち上げようとすると、ビリッと電気が走ったような痛みが出る状態)を伴う足の痛みがある(症状が腰痛だけの場合はおこなわない)
○後縦靱帯下脱出型(髄核が線維輪から飛び出して、後縦靱帯を突き破らずに神経を圧迫しているタイプ)のヘルニア

「ヘルニコアは保存療法と手術の間におこなう中間療法という位置づけですので、保存療法を1カ月以上続けても改善しなかった患者さんが対象になります。副作用でアナフィラキシーという重いアレルギー症状が起こることもあるので、1度しかこの治療は受けることができません」(同)

 椎間板内酵素注入療法の登場で、ヘルニア治療の流れは大きく変わったかというと、決してそうではない。基本スタンスは、やはり“最初は保存療法から始める”というものだ。

■種類増えた鎮痛薬 運動療法も重要

「保存療法は手術などと違って、飛び出したヘルニアを小さくする治療ではありません。しかし、特に40~50代ぐらいまでの比較的若い世代のヘルニアの場合、自然に吸収されて症状が治まることが多く、7~8割の患者さんが保存療法だけですんでいます」

 と話すのは、「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2016」の編集に携わった日本医科大学千葉北総病院整形外科の中嶋隆夫医師(本川越病院でも治療)だ。

 長期的な予後を見た研究では、保存療法をしたグループと手術を受けたグループで差がなかったという報告もある。「排尿・排便障害があるなど、手術が必要なケース以外は、保存療法を」(中嶋医師)という。

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保存療法でどれが最適か