その後もランナーが100メートルほどの感覚で、途切れることなく横を通り抜けていく。

 千代田区は4月27日、公式ツイッターで「マスクの着用」「間隔を空ける等、周囲への配慮をお願いします」と呼びかけた。皇居外周のランニングコースにも同様のメッセージが設置されている。だが、「ランニングは密集してないから大丈夫でしょ」(70代男性)という声があるように、ランナーたちのなかにはマスクをしていない人の姿も少なくなかった。

“外出自粛”の効果だろうか、その他に人影はまばらだ。友人と写真撮影していた男子高校生2人に声をかける。

「学校が休校で、暇だったので自転車でここまで来ました。今日が即位の日だということはここに着いてから気づきました。もうずっと休みなので、曜日感覚もない。もう5月だったんですね(笑)」

 その後も取材を続けるが、「なんとなく来た」(50代女性)、「即位の日は意識していなかった」(70代男性)などと、1年前のお祝いムードがうそのようだ。ベンチに腰掛けて日向ぼっこしている人がちらほらといるが、観光客らしき人の姿は見当たらない。

 取材を終えようとしたとき、ベンチもない広場の隅でポツンと一人、男性が地べたに座っているのが目に入った。男性はマスク姿に帽子を深くかぶり、何をするでもなく皇居の方をじっと見つめている。都内に住む無職、男性(69)だ。

大阪万博が行われたときにね、日本館の警備員をしていたんだ。昭和天皇のすぐそばに控えていたんだよ。今では上皇后の美智子さまにもお目にかかったことがある」

 スマホを取り出し、当時の写真をみせながら男性は懐かしそうに話す。「たまたま散歩に来ていただけ」というが、この日が「天皇即位の日」だということについて「不思議な縁を感じるねえ」と感慨深げだ。

「去年に嵐が歌ったときだったかな。外にモニターが設置されてね。その時もここにはものすごい人が集まっていたなあ。去年の天皇即位の日にも、多くの人が来ていたようだね」

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家に帰っても一人…