17時を境にON・OFFを分けるのは、今は昔。リモートワークなら、田口さんのようにON・OFFを細切れにすることで、仕事をしながら家族からの「要請」にもこたえられる。また私たちの生活は、食事、運動、趣味など、実にたくさんの要素で構成されており、これらのバランスが日々の充実を支えていることもわかる。

 リモートワーク総合人材サービスで約700人のリモートワーカーが活躍する「キャスター」の中川祥太さん(33)は、ON・OFFのバランスをとるうえで最も留意すべき点を「自分なりのスイッチをつくること」と語る。

「たとえば、化粧する、仕事着に着替えるなど、在宅勤務中の自分をONにするスイッチを見つけることが重要。通勤など、会社から与えられたスイッチに依存していた人は、それがなくなった途端、どのように緊張感を保ってよいのかわからなくなる。結果として、勤務中にお酒を飲み始める人もいます」

■不要不急の出会いは激減

 コンサルタントの日比谷さん(43)は、ワーク中心だった生活に、ライフをなだれこませてみた。都内で妻と子ども2人の4人暮らし。これまで「朝食以外はほぼ外食」というほど仕事で出回っていたが、外出自粛をうけ、3度の食事時間をすべて家族と過ごしている。

 起床は7時半。ストレッチをして朝8時から家族と朝食。納豆ご飯、肉類、野菜の定番メニューをいただき、9時から自宅の書斎で仕事を始める。午前中は原則として自分の仕事に集中。原稿を書いたり、講演資料をつくったりしていると、お昼がやってくる。ランチももちろん家族全員で。1時間の会話を楽しんだのち、13時には再び仕事に戻る。午後はオンライン会議の連発。ときに、オンラインでのセミナーや取材をこなし、17時から家族そろって夕食をとる。もちろん、食事の準備や後片付けは日比谷さんも担っているが、この理想的な生活はパートナーなど家族の理解があってのことだ。

「以前、家族とは朝と週末しか顔を合わせなかった。でも、コロナが蔓延する状況をどう解釈するかなど、混みいった話もすることで距離が近くなった」

 日比谷さんは現在、夕食後に家族でゲームをしたり、オンラインでアニメ番組を見たり、穏やかな時間を過ごしている。また様子を見て、ランニングに出かけたり、栄養管理にチャレンジしたり、楽しみたいときは「zoom飲み会」に参加したり、自ら楽しむ時間も確保している。日々を構成する一つひとつの要素に、不満はない。だが、あえて長期的な課題にも触れる。

「不要不急の出会いがなくなっている。現時点では様々な相談をオンラインで行うなど、人間関係に大きな変化はない。でも、新しい人との出会いがほぼないので、中期的には閉塞感が出てくるかも」

 私たちの生活は、実にいろんな要素で成り立っている。リモートワークは、それを洗い出し、新しい働き方や生活を見出すきっかけにもなっている。(文・カスタム出版部)