とはいえ、それだけでは防げるわけでもなく、さまざまな対応も同時になされています。

 屋内100人、屋外500人を超える集会の自粛が要請されています。また、屋内1.5メートル、屋外1メートルのソーシャル・ディスタンシングが指示され、飲食店や待合室等の椅子は位置や向き、数を制限するようにという通達が出ています。

 学校や店舗等、何らかの施設に入るときは体温を測定され、37.5度以上の人は入場を拒否されます。公共交通機関内では全行程においてマスクの着用が義務付けられ、新幹線の車内での飲食も厳禁となっています。

 また、海外からの帰国者やその濃厚接触者など、一定条件に当てはまった人には14日間の居宅隔離が義務付けられています。が、逆に言えばそれを守るという条件で、多くの業種が営業を続けています。保育や教育についても、幼稚園から高校までは、マスク着用・体温測定・ソーシャル・ディスタンシングのもとに行なわれています(大学のみ、講義が屋内100人を超える集会の禁止に抵触してしまうため、オンライン講義などを併用しています)。

 とはいえ「感染が怖いから」と自主的に外出を控える人もおり、経済の停滞が問題となっていることも事実です。これには、政府から、個人や企業に対して金銭的補助が行われています。旅行・観光業から舞台関連、そして現在ではタクシーの運転手や小売業など、経済的な問題がはっきりしてきた業種に対して順次補助を表明しているためか、政府への信頼感は現在も維持されています。

 ただ、そもそも厳格な自粛の指示がなく個々の判断に任せていたことが裏目に出たか、4月初めにあった連休期間には観光地に人が密集してしまったこともありました。そして、その場所にいた人のスマホに、政府から「マスクを着用し、ソーシャル・ディスタンシングを保つように」という警告メッセージが送られるという一件もありました。私が滞在している中国医薬大学では、このメッセージを受け取った学生に対し、大学として独自に14日間の登校停止を課しています(ただし連休時の密集が理由と考えられる感染者の急増は起きていません)。

 新規感染者が増えなくなってはきました。しかし政府からは「まだ油断してはならない、不要不急の遠出は控えて」というメッセージが提示され続けています。

 今後どのように終息宣言にこぎつけ、完全な日常を目指すのだろうか、あるいは現在の鎖国状態(台湾は全世界に対して入国禁止を宣言しています)を続けながら国内をなんとかして立て直していくのか。感染対応の次のフェーズの展開を祈るような気持ちで、あるいは期待を込めて見つめている……というのが、台湾に滞在している外国人として感じる、正直なところです(4月17日、台湾外交部は、これまでの3月21日以前に入国した外国人に対する滞在期間延長措置をさらに30日再延長し、計60日間の滞在期間の延長を特段の手続きなしで許可する旨をアナウンスしました。なので私の台湾滞在もまだ続きます)。

追記:
本稿を編集部に送った翌日、公益財団法人日本台湾交流協会よりメールを受け取り、4月30日をもって、社交距離を保ちながらのさまざまな活動が推奨されるようになりました。海外との通行は制限しながらも、国内での活動は復旧に向かいつつあります。現代において、経済は一国では完結しません。ですから決してたやすいことではないでしょう……が、これは我々にとって大きな希望となるのではないでしょうか。(文/糸数七重)