今オフの去就に注目が集まるヤクルトの山田哲人 (c)朝日新聞社
今オフの去就に注目が集まるヤクルトの山田哲人 (c)朝日新聞社

 昨年のオフは美馬学(楽天ロッテ)、鈴木大地(ロッテ→楽天)、福田秀平(ソフトバンク→ロッテ)とパ・リーグ内での移籍に終始した国内FA戦線だが、今年のオフは各球団の動きが活発になることが予想される。その中心となるのが今シーズン中に国内FA権を取得する見込みの山田哲人(ヤクルト)だ。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 プロ入り4年目に最多安打(193)のタイトルを獲得してブレイクすると、その後は3度に渡りトリプルスリーを達成。昨年は打率を落としたものの、自身4度目となる30本塁打、30盗塁をマークした。セ・リーグのセカンドには菊池涼介(広島)がいるためゴールデングラブ賞の受賞こそないが、過去3年間は菊池を上回るリーグトップの補殺数を記録している。まさに走攻守全てを兼ね備えた現役最高の二塁手であり、今年で28歳という年齢を考えても超大型契約となる可能性は高い。少し気が早い話だが、そんな山田の獲得に乗り出す球団について展望してみたいと思う。

 まず真っ先に獲得に動く可能性が高いのが巨人だ。これまでもFAで数々の大物選手を獲得しており、近年では丸佳浩が大型契約で入団して中軸に定着している。そして山田の守るセカンドは巨人の大きな弱点でもあるのだ。昨シーズン、セカンドでスタメン出場した選手を並べてみると以下のようになっている。

若林晃弘(27歳):57試合 56安打5本塁打21打点11盗塁 打率.239
山本泰寛(27歳):41試合 41安打2本塁打10打点2盗塁 打率.232
田中俊太(27歳):24試合 35安打4本塁打14打点2盗塁 打率.224
吉川尚輝(25歳):11試合 16安打0本塁打3打点1盗塁 打率.390
増田大輝(27歳):8試合 10安打0本塁打6打点15盗塁 打率.200
吉川大幾(28歳):2試合 0安打0本塁打0打点0盗塁 打率.000

※試合数はセカンドでのスタメン出場。成績は昨シーズン通算。年齢は今年の満年齢。

 本来のレギュラー候補は吉川尚輝で、昨年も開幕当初は好調な打撃を見せていたが、腰痛で離脱してそのまま一軍に復帰することなくシーズンを終えている。その後は若林、山本、田中の三人の併用が続いたが、いずれも打率は2割台前半と物足りない数字に終わった。ともに二桁盗塁をマークした若林と増田の脚力は魅力だが、現在の打力を考えるとスーパーサブという位置づけがしっくりくる。年齢を考えても山田の有力な対抗馬となれそうな選手は見当たらない。

 そして巨人の弱点がセカンドというのは今に始まったことではない。過去10年間を振り返ってみても、セカンドで規定打席に到達したのは脇谷亮太(2010年)と片岡治大(2014年)の2回だけである。もし山田が加入すれば少なく見ても5年間は安泰であり、坂本勇人岡本和真と並ぶ内野陣は12球団でもトップの迫力となるだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
巨人の対抗馬となりそうなチームは…