「日本が大好き」と語る、イ・テガンさん(撮影/写真部・加藤夏子)
「日本が大好き」と語る、イ・テガンさん(撮影/写真部・加藤夏子)

厨房には外国人従業員の姿も(撮影/写真部・加藤夏子)
厨房には外国人従業員の姿も(撮影/写真部・加藤夏子)

 韓国・チンジュ市出身で俳優、歌手、タレントとして活動するイ・テガンさん(34)。2008年から日本に活動拠点を移し、映画やドラマなどに出演するかたわら、19年に東京・赤坂で韓国料理店をオープン。オーナーとして運営に携わっている。そのテガンさんが、「日本が大好きだからこそ、お話したいことがある」と連絡をくれた。一報を受け、テガンさんのお店がある赤坂に向かった。

【写真】イ・テガンさんと外国人従業員

 緊急事態宣言以降、都内の繁華街はガラガラ状態が続く。普段なら街はにぎわいを見せ始める時間だが、赤坂も例外ではない。人気のない真っ暗な店内と張り出された真っ白なA4用紙が事態の深刻さを物語る。何度か利用した和食料理店にも張り紙があった。「ここも休業か」とのぞいてみると、「閉店」の文字。認識の甘さを痛感した。

 店に到着すると、「こんなときにすみません」と笑顔でテガンさんが迎えてくれた。厨房に目をやると、数人のスタッフが忙しそうに動き回っている。「ここは営業を続けているんですか」と聞くと、「誰も来ないんですけどね」と苦笑い。続けて、「そんなことより、どうしても日本のみなさんにお伝えしたいことがあるんです」と、テガンさん。表情は硬く、疲れた様子だが、まなざしは熱い。その思いを静かに語り始めた。

*  *  *

――「伝えたいこと」とはなんですか?

 まずは今回の新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方々にお悔やみ申し上げます。私が話したかったのは、いまこうした状況のなか、身動きが取れずに困っている在日外国人がたくさんいること、そして彼らの現状を知ってほしいということです。もちろん日本人の方も大変な状況にあることを理解しています。ただ外国人労働者たちはとても厳しい状況に追いやられています。

――「厳しい状況」について具体的に教えてください。

 日本に活動拠点を移して10年以上がたちました。その間に、日本で暮らす外国人との接点も増え、彼らが困ったときに相談を受けるようになりました。そうした外国人たちの知人や友人から、いま「SOS」がたくさん届いています。なかでも外国人労働者たちは、緊急事態宣言以降、真っ先にシフトを減らされたり、職場から解雇されたりした人もいます。それでも金銭的な問題やウイルスの問題で母国には帰れない。身動きがとれない状況で収入が得られていないんです。彼らにとって命に関わる問題です。

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