そうですよね。一言で「逃げる」と言っても、ひとりで逃げるのか、誰かと逃げるのかによって、中身はまったくちがってきます。

 言葉はあんがい適当なものなんです。「あきらめる」という言葉も世間では悪い意味かもしれませんが、元々の意味は「物事をあきらかにして、本質を見極める」という意味です。

「逃げる」という言葉も、自分なりに価値のある言葉にできると思います。「遠回り」や「弱さ」や「甘え」といった言葉も全部そうです。

 僕は言葉の使い方のレパートリーを増やしたり、そのためのアイディアを提供したりすることを、自分の本でやってきたつもりです。

 他人が批判的に使う「逃げる」ではなく、オリジナルな「逃げる」が生み出せたらいいですね。うまくいけば「俺には逃げる才能があるんだ」とか、「君の逃げ方はまだまだだね」とか、強気な言い方もできるのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

(聞き手・文/石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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