昭和から平成の時代は、身体でファンを圧倒できるレスラーが多かった印象が強い。『マッチョドラゴン』こと藤波辰巳(新日本など、185cm108kg)は均整の取れた肉体美を誇りドラゴンブームを起こした。角界出身の安田忠夫(195cm130kg)は総合格闘技参戦で一時期存在感を示すも、素行不良などで短命に終わった。そして令和になった現在も、身体で圧倒してくれるレスラーの系譜は受け継がれている。全日本・諏訪魔(188cm120kg)、石川修司(195cm130kg)やプロレスリングZERO1・佐藤耕平(193cm120kg)は肉体を活かした豪快なファイトで魅了してくれる。

 また身長の足りなさを筋肉量でカバーしているレスラーには凄みを覚える。なぜならば、尋常ではない努力をを感じさせるからだ。前述した棚橋弘至(新日本)や佐々木健介の他にも多くの名レスラーが存在する。大日本プロレス・関本大介(175cm120kg)、岡林裕二(175cm123kg)や、ZERO1・火野裕士(178cm120kg)などは横への広さと厚さが群を抜いている。幅と奥行きがずば抜けたレスラーだと言える。

 そして忘れてならないのは御大・ジャイアント馬場(全日本)だ。209cm135kgのデカさを誇る、世界的スーパースター。一線を退いた晩年も存在感は変わらず日本マット界の顔だった。場内売店で椅子に腰掛けファンサービスする姿もあったが、その際に醸し出していたオーラは周囲を圧倒。聖地・後楽園ホールでエレベーターを降りた瞬間、ガラス越しに見える巨大な背中は安心感すら与えてくれた。

 われわれ常人が実際にできないことを体感させてくれるのがプロレスの醍醐味。名前を挙げた以外にも強烈な肉体を持ったレスラーは多く、その1人1人すべてが尊敬に値する。「プロレスラーはスゴイんです」と言うセリフは、勝敗だけでなく身体や存在感にも当てはまる。

 プロレスラー最大の武器は己の肉体だ。そして、それをより強固に感じられるのは、映像などではなく会場でのライブ観戦。新型コロナウイルスの影響で、ほぼ全団体が興行中止や無観客試合を強いられている。一刻も早くこの難局が過ぎ去り、身近な距離でレスラーの凄みを感じたい。プロレスが見たい。(文・山岡則夫)

●プロフィール
プロフィール/山岡則夫1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。