ともに球史に残る鉄壁の守備を披露した中日・荒木雅博(左)と西武・辻発彦(右) (c)朝日新聞社
ともに球史に残る鉄壁の守備を披露した中日・荒木雅博(左)と西武・辻発彦(右) (c)朝日新聞社

 昨シーズンのプロ野球である記録が更新された。中日がチームのシーズン守備率.992をマークし、セ・リーグの歴代最高となったのだ。これまでのセ・リーグ最高は2004年に同じく中日がマークした.991。シーズン失策数はこの年と並ぶ45で、こちらはセ・リーグタイ記録となっている。そこで今回は、過去のシーズンから、歴代最高の守備布陣はどの年のどの球団になるのか、探ってみたいと思う。

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 まずセ・リーグ記録を達成した昨年の中日の布陣は以下の通りである。

・中日(2019年)
捕手:加藤匠馬
一塁:ビシエド
二塁:阿部寿樹
三塁:高橋周平★
遊撃:京田陽太
左翼:福田永将
中堅:大島洋平★
右翼:平田良介
★はゴールデングラブ賞を受賞

 最大の強みは阿部、高橋、京田の内野陣。阿部は昨年がレギュラー一年目ながら、失策はわずか3でリーグトップの守備率をマーク。派手さはないものの堅実なプレーが光る。高橋、京田の三遊間も、守備ではリーグトップの安定感と言えるだろう。外野も大島、平田の二人にまだまだ力がある。ゴールドグラブは高橋と大島の二人だけだったが、リーグ記録を作ったのもよく分かる布陣と言える。ただ、扇の要である捕手の加藤は強肩ではあるが名手と呼べるレベルではなく、ビシエドと福田の二人も突出した守備力があるわけではない。それを考えると史上最高とは言い難いだろう。

 次に紹介したいのが同じくセ・リーグシーズン最少の失策記録を達成した2004年の中日だ。

・中日(2004年)
捕手:谷繁元信
一塁:渡辺博幸★
二塁:荒木雅博★
三塁:立浪和義
遊撃:井端弘和★
左翼:英智★
中堅:アレックス★
右翼:福留孝介
★はゴールデングラブ賞を受賞

 この年は落合博満監督就任一年目。他球団からの補強を凍結し、既存選手の実力を10%底上げすれば優勝できるという公言通り、見事5年ぶりのリーグ優勝を果たしている。落合政権時のチームを支え続けた荒木、井端の“アラ・イバ”コンビが揃って初のゴールデングラブ賞を受賞。谷繁、アレックスと鉄壁のセンターラインを誇った。また特筆すべきは渡辺、英智という守備固めの二人の存在だ。ともに規定打席には未到達ながら、高い守備力でチームを支えてゴールデングラブ賞を受賞している。

 また、ライトの福留もこの年は骨折で夏場に離脱したことが響いてゴールデングラブ賞こそ逃したものの、守備では全盛期と言えるパフォーマンスを見せていた。ちなみにこの年、投手部門の川上憲伸もゴールデングラブ賞を受賞しており、同一チームから6人の受賞はセ・リーグ記録である。

 セ・リーグで他に守備力の高かったチームとなると、古田敦也が全盛期だったヤクルトも候補となる。しかし90年代はファーストの広沢克己とサードのハウエル、2001年に優勝を果たした時もレフトのラミレスといった、守備力の低い選手も目立った。そう考えると総合的な守備力では2004年の中日に軍配が上がりそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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パ・リーグで鉄壁だった守備布陣は?