フジテレビ「ワイドナショー」でのコメントで
フジテレビ「ワイドナショー」でのコメントで"粋"な面を見せることも(c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、仕事が激減し窮状に陥っている後輩芸人を支援すべく「ダウンタウン」の松本人志が自腹で100万円まで貸し出すという話が16日に東京スポーツで報じられた。

 同紙には松本が貸し出す際のルールとして“無利子。無担保。上限100万円。返済期間5年”とあったが、筆者も1週間ほど前に関係者を通じて松本からの文面を目にしたが、まさにその通りのルールが記されていた。そして、最後に一言。「条件・おもろい奴」と書かれていた。

 松本を前にしての「おもろい奴」というハードルはかなり高いものかもしれないが、迅速、かつ、身を切ることの極致のような対応に多くの芸人から感謝の声があがっている。

 こちらが取材する限り、松本は自分が直接よく知っている後輩に概要を伝え、その後輩を通じて、さらに若い後輩に情報を伝達するシステムを取っており、直接は交流がない若手からのSOSも届くような連絡網を作っている。

 現金という、平たく言って、一番助かるものを貸し付けという形ながら後輩に渡す。この上ない施策ではあるが、それと同時に、いかに現状が深刻かも垣間見えた気がした。

 これまで、例えば、何かトラブルを起こした、もしくは病気・ケガなどで体調を崩した。そうやって戦線離脱した芸人に対して、松本に限らず、多くの先輩芸人は“番組に呼ぶ”“相方を積極的にブッキングする”“トーク中に名前を出して忘れ去られないようにする”といった後方支援的な形でサポートをするのがオーソドックスなパターンだった。

 バイク事故で長期入院が必要となり、仕事の現場から離れていた千原ジュニアに対し、明石家さんまが“退院祝い”としてレギュラー番組をプレゼントしたのは有名な話だが、そのような形が芸人間の支援としては、よく聞くものだった。

 もちろん、個人的に金を用立てるといったことも耳にしたことはあるが、先輩から後輩へのサポートの仕方にも、否、先輩から後輩へのサポートだからこそ、相手を気遣い、不躾にならないように“粋”の要素を必ず入れる。

著者プロフィールを見る
中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

中西正男の記事一覧はこちら
次のページ
一筋の光となった"ギャグつなぎ"