東京消防庁では、2018年4月から、第33期東京消防庁救急業務懇話会(専門部会を含む)、東京都メディカルコントロール協議会などによる検討を重ね、2019年2月に一定の条件のもとに心肺蘇生を中止するという対応方針が答申されました。これは、前述の分類のうち(2)に該当します。

 東京消防庁救急部救急管理課計画係主任の鈴木翔平さんによると、検討会では医療倫理の4原則のうちの「自立尊重の原則」を重視してまとめられたとのことです。また、専門部会の委員を務めた西田医院院長の西田伸一医師は、「都民へのアンケートで、多くの人が自宅で最期を迎えることを希望しており、看取りの場所の選択肢を提供することが求められてのことです」と言います。

 東京消防庁の対応方針は、2019年12月16日から運用されています。そのポイントは、

●以前から本人が心肺蘇生を望まないという意思表示をして、それを医師などと共有している(アドバンス・ケア・プランニング<ACP>=「人生会議」を行っている)
●電話連絡により、救急隊がかかりつけ医から本人の意思などを確認することができ、医師から「中止」の指示を受ける

 です。これらと、本人が人生の最終段階にある、心肺停止の原因が外傷などではないなどが、心肺蘇生中止の条件になります。

 心肺蘇生を中止した場合、救急隊は、かかりつけ医が現場に到着するまでの時間を確認します。おおよそ45分以内に到着できる場合、救急隊は、かかりつけ医が到着してから引き揚げます。

 およそ12時間以内に到着できる場合、家族にまかせて引き揚げます。どちらの場合も、家族は心肺蘇生中止の同意書に署名し、かかりつけ医は、現場で診察して死亡を診断します。

 このように東京消防庁管内では、119番通報により自宅での看取りの道筋からいったん外れてしまった場合でも、本来の道筋に戻すことが可能になったのです。

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在宅医療に携わり知った家族の想い