「え、でもインフルエンザは薬があるじゃん?」と思った人もいるでしょう。そこで今回の新型コロナウイルスも含めて、「ウイルスへの薬はどのようなものなのか」を考えてみたいと思います。


 
 ウイルスは、自分の遺伝子をどんどん複製し、それを人の細胞に次々入り込ませていくという方法で増えていきます。そして、細菌のようにきちんとした構造をもっているわけではなく、いってしまえば「ただの遺伝子だけ」というような非常に小さな存在です。

 薬は鍵のような形をしていて、特定の形(鍵穴)をもった異物にぴったり入り込み、相手を退治するものです。そのため、構造をもたない(鍵穴がない)ウイルスに対しては、つくりようがないのです。

 ですからインフルエンザの薬は、 ウイルスが「自分の殻を破って出てくるのを防ぐもの」「遺伝子の複製を防ぐもの」「細胞の外に出ていくのを止めるもの」のどれかしかありません。これらは、ウイルスが今以上増えるのを止めることはできますが、すでに増えてしまったウイルスを倒すことはできないのです。

 インフルエンザの薬は発症から48時間以降に飲んでもあまり意味がないと言われるのは、すでに増殖が広がってしまっているからなのです。 
 
 インフルエンザは高熱が出ます。これは症状の一つですが、違う角度から見ればウイルスと体の免疫が戦っているからこそ起こる反応でもあります。熱が高ければ高いほど免疫細胞は活性化し、ウイルスの活動は弱まります。とはいえ熱が高いと体がだるくなるわけで、体力を消耗します。

■服用せずに治すか、対症療法の薬を飲んで症状を緩和するか

 つまりウイルスに対しては、薬を飲まずにガンガン治すか、体力の消耗を考え、対症療法の薬を飲むことで症状を緩和しつつ治すかという選択しかなく、いずれにせよ、最終的には自分の免疫にがんばってもらうほかにないのです。
 
 結論として、現在のコロナウイルスに対しては、マスクや手洗いなどの予防に加えて、自分の腸内にいる善玉菌を増やしてとにかく免疫力を高めておくことが、 今できる最善の対策だといえます。

 免疫力を高める方法は、さまざまなところで紹介されているのでここでは省きますが、特に免疫に効果的な乳酸菌は 、クレモリス菌 FC 株、ラブレ菌、ビフィズス菌 SP 株、 ビフィズス菌BB 536株と言われています。摂取する際の参考にしてみてください。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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