演技の実力が再評価されてきた剛力彩芽(写真/朝日新聞社)
演技の実力が再評価されてきた剛力彩芽(写真/朝日新聞社)

「美の総合商社」こと、オスカープロモーションでお家騒動が起きている。米倉涼子をはじめ、忽那汐里、岡田結実、ヨンアといった人気タレントが退社。一般社員も約3割が辞めたという。そこには創業者である会長の娘婿によるパワハラが関係しているとも報じられた。 

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 そんななか、勢いを取り戻しつつあるのが剛力彩芽だ。2018年4月にZOZOの前澤友作社長(当時)との熱愛が報じられて以来、プライベートな話題ばかりだったが、昨年11月、破局したのを機に、芸能活動を本格的に再開。3月29日放送のスペシャルドラマ「陰陽師」(テレビ朝日系)ではヒロインを務めた。平将門を父に持ち、陰陽師の安倍晴明らを惑わし追いつめる瀧夜叉姫だ。

 この評判をネットで見てみると、これまでになく称賛の声が目立った。その内容は「意外と演技がうまい」「闇の深いミステリアスな役がハマってた」「和顔だから時代劇が合う」という三点に大別できる。実はここに、女優・剛力をめぐる問題が凝縮されているのだ。

 まず「意外と演技がうまい」というのは、世間がいかに彼女の演技に興味がなかったかということのあらわれだろう。前澤との熱愛以前から、彼女には事務所のゴリ押しで売れているのではという負のイメージがあり、実力不足という先入観があった。それゆえ、彼女の演技をちゃんと見ようとする人が少なかった。

 しかも、ブレーク当時のキャラは「ヤマザキ・ランチパック」のCMに象徴される、ボーイッシュで明るく元気な子というもの。ただ、それだけでは役も限られるし、表情や声質などはむしろ寂しげだったりもする。「闇の深いミステリアスな役がハマってた」というのは、彼女がなかなかそういう役に巡り合えなかったということであり、破局も経験したことでますますハマるようになったともいえる。

 そして「和顔だから時代劇が合う」については、彼女自身はもとより、オスカーという事務所の問題も見え隠れする。この事務所は本来、そういうタイプのタレント育成に熱心ではなかったのだ。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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オスカーのなかでは「傍流」だった