姉の萌音は2014年に公開された映画「舞妓はレディ」で素晴らしい歌声を披露し、メガホンを取った周防正行監督に「平成のオードリー・ヘップバーン」と言わしめたほど。役名の“小春”名義で主題歌「舞妓はレディ」をリリースしている。またアニメ映画「君の名は。」(2016年) の大ヒット御礼舞台挨拶では、RADWIMPSの野田洋次郎からセッションを即興で提案され、主題歌のひとつ「なんでもないや」を熱唱。やさしい歌声を響かせ観客を沸かせたこともある。

 妹の萌歌も負けていない。2016年に「午後の紅茶」のテレビCMシリーズに抜擢され、CHARAの名曲「やさしい気持ち」を歌い、その透明感のある歌声が話題をさらった。同CMの評価は高く、完結編となる2018年のシリーズ第4作まで出演を果たした。

■高畑充希は星野源とセッション

ドラマや映画にひっぱりだこの高畑充希さん(28)は、実は芸能界入りのきっかけはミュージカルのオーディション。ドコモのCMでX JAPANの名曲『紅』の熱唱はインパクトがありました。最近でも、新型コロナウイルスに関連して星野源さんが投稿した『うちで踊ろう』という楽曲に高畑さんがセッションした動画も話題となりました。意外なところでは杏さん(34)。14日に外出自粛のメッセージとともに加川良『教訓I』のギター弾き語りカバーをSNSで披露し、大絶賛されていましたね。ギターの腕前もすごいのですが、声質もよく、過去にテレビ番組で披露した際、ホスト役の小田和正さんも感動したほどです」(前出の編集者)

 ほかにも、映画「アナと雪の女王」シリーズで見事な歌唱力を披露し、社会現象を巻き起こした松たか子(42)、同じく「アナと雪の女王2」のイドゥナ役でのやさしい歌声で多くの観客の涙を誘った吉田羊、アイドルグループ「Folder」出身の満島ひかり(34)など、演技派女優たちの歌唱力も目を引くものがある。

 ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、一連の流れについてこう分析する。

「ひと昔前の女優の場合、演技は上手くても歌は下手みたいなケースが多かったように思いますが、もはやそれも過去の話。少々型破りでもその人の個性が“味”とされる演技と違って、上手い下手が如実に現れてしまう歌唱の分野で勝負し、なおかつ評価を受けている彼女たちは本物の才能の持ち主と言ってもいいでしょう。また『演技だけでは通用しないから歌うのではないか』という少々うがった見方もありますが、むしろ演技以外の才能を何か一つでも持っていないと、これだけ価値観が多様化した今の時代において存在感を示すことはなかなか難しい。その意味で、今後は歌だけでなく芸術やスポーツなど、演技以外の分野でも十分活躍出来る、多方面にずば抜けた才能を発揮する女優が当たり前のように出てくるでしょう」

 ただでさえ、熾烈な争いを極める女優界だが、令和の時代は実力派女優=高い歌唱力という方程式がスタンダートとなっていくのかもしれない。生き残りをかけた女優たちの戦いは熾烈を極めそうだ。(高梨歩)

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高梨歩

高梨歩

女性ファッション誌の編集者など経てフリーライターに。芸能やファッション、海外セレブ、育児関連まで、幅広いジャンルを手掛ける。活動歴は約20年。相撲フリークの一面も。

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