買収劇の連鎖、台風被害、新幹線で客激減…新型特急「ひのとり」が引き継ぐ近鉄の名阪特急ヒストリー (3/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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買収劇の連鎖、台風被害、新幹線で客激減…新型特急「ひのとり」が引き継ぐ近鉄の名阪特急ヒストリー

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小寺幹久dot.#鉄道
3月14日、近鉄の大阪難波駅で挙行された「ひのとり」の出発式。運転士と車掌への花束贈呈は、マスク姿で行われた(C)朝日新聞

3月14日、近鉄の大阪難波駅で挙行された「ひのとり」の出発式。運転士と車掌への花束贈呈は、マスク姿で行われた(C)朝日新聞

伊勢湾台風で不通となった近鉄名古屋線(左手前)と国鉄関西本線(右上)。後方の長良川、揖斐川の手前に、水に浸かった近畿日本長島駅(現・近鉄長島駅)がある。この区間は、9月26日に複線の新線に切り替えられたばかりだった。1959年10月3日撮影(C)朝日新聞社

伊勢湾台風で不通となった近鉄名古屋線(左手前)と国鉄関西本線(右上)。後方の長良川、揖斐川の手前に、水に浸かった近畿日本長島駅(現・近鉄長島駅)がある。この区間は、9月26日に複線の新線に切り替えられたばかりだった。1959年10月3日撮影(C)朝日新聞社

1959年 近鉄の新ビスタカー10100系電車の試運転。1960年に登場予定だった10100系「新ビスタカー」。中間の2階建て車両は、近鉄特急の象徴となった。1959年12月に予定が早まり、大阪線で試運転を行う。1959年11月9日撮影(C)朝日新聞社

1959年 近鉄の新ビスタカー10100系電車の試運転。1960年に登場予定だった10100系「新ビスタカー」。中間の2階建て車両は、近鉄特急の象徴となった。1959年12月に予定が早まり、大阪線で試運転を行う。1959年11月9日撮影(C)朝日新聞社

1988年に登場した近鉄の新しい名阪特急「アーバンライナー」。斬新なデザインと快適さで人気を集め、名阪特急の再興に一役買った。(C)朝日新聞社

1988年に登場した近鉄の新しい名阪特急「アーバンライナー」。斬新なデザインと快適さで人気を集め、名阪特急の再興に一役買った。(C)朝日新聞社

 1958年7月に、初の新性能電車方式の特急車として10000系が登場した。7両編成が1本と試作的要素が強いものの、世界初の2階建て電車で、大阪線で営業運転を開始した。

 そして、1960年2月に名古屋線を標準軌に改軌し、名阪間を直通運転する特急用として10100系(ビスタカーII世)を開発した。10000系を改良した量産車で「近鉄特急2階電車 新ビスタカー」として宣伝された。

■伊勢湾台風で甚大な被害を受けるも改軌工事の工期短縮に発送を転換

 狭軌であった名古屋線は、1960年2月に線路幅を標準軌に改軌して全線開通する予定で、橋梁の架け替えなどを含む改軌工事が進められていた。

 しかし、1959年9月に伊勢湾台風が発生し、名古屋線は甚大な被害を受けた。

 そこで当時の近鉄社長、佐伯勇氏は災いを逆手に取った。復旧工事を兼ねて改軌工事を進めることで、改軌開通の時期を繰り上げたのである。

 1959年11月27日、名古屋線の標準軌工事が完成。同年12月12日から10100系が予定を早めて登場し、名阪直通特急として運転を開始した。

 これにより、速くて快適な名阪特急の利用者が増加したが、1964年の東海道新幹線開業後は減少に転じた。当時の新幹線は、今ほど運賃・料金が高くなかったのである。

 減少傾向は、国鉄との運賃格差が大きくなる1976年まで続き、近鉄では短編成化や「乙特急」化で対応するなど、名阪特急にとって最も厳しい時代であった。

 その後、次第に需要を取り戻してきたこともあり、1988年に新型特急21000系「アーバンライナー」が登場した。白を基調にオレンジ色の帯を巻く流線形車体で、これまでの近鉄特急のイメージを一新。全車電動車の6両編成で、民鉄初の時速120キロメートル運転(現在は時速130キロ)を開始し、鶴橋~名古屋間の所要時間が初めて2時間を切った。

 2003年から更新工事が始まり、「ゆりかご型シート」への交換や喫煙コーナーの設置などが行われ、現在も「アーバンライナーplus」として運転されている。

 そして2020年3月、80000系「ひのとり」が登場し、名阪「甲特急」に投入されたのである。大急ぎで名阪特急の歴史を振り返ってみた。事態が収束したら、先人の英断と歴史を思いながら、「ひのとり」の快適な旅を楽しんでいただきたい。(文・小寺幹久)

小寺幹久/会社員を経て鉄道模型メーカー「リトルジャパンモデルス」を設立。その後「リトル出版」も設立し、現在、林基一著『近鉄電車写真集』を発売中。「鉄道まるわかりシリーズ」(天夢人刊)などで執筆も行う。


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