しかし、彼がヨゴレ役となっていることにより、SMAPや嵐の好感度が相対的に上がってきたともいえる。なんだかんだいって、今も事務所には貢献しているのだ。

「三匹が斬る!」の件にしても、プラスになっていることはある。まずはこのときの世間の反応から、事務所が拙速なやり方をしなくなったこと。「必殺」シリーズのヒガシのように、配慮や親和性を大事にしながら「禅譲」の機が熟すのを待つという姿勢にはこの経験が生かされているのではないか。

 そしてもうひとつ、ジャニーズの時代劇進出を促進したことだ。実は当時、時代劇界ではすでに人材難が始まっていて、見栄えと運動神経のよさを併せ持つジャニーズ勢に期待する機運がひそかに高まっていた。マッチが勇気ある挑戦をしたことで、後輩も次々と続いたし、時代劇側も呼びやすくなったのである。

 その結果、木村拓哉の映画「武士の一分」だったり、滝沢秀明の舞台「滝沢演舞城(のち、滝沢歌舞伎)」だったりという、貴重な収穫も生まれた。また「必殺」シリーズはヒガシ以外に松岡昌宏や大倉忠義、田中聖、知念侑李なども出演するようになり、もはやジャニーズが支えている印象だ。

 とはいえ「禅譲」そのものには時間と手間がかかる。イノッチにしても主役への昇格には11年を要したし、相葉にいたっては16年だ。また、ジャニーズではなくなってしまったが、香取慎吾が「全日本仮装大賞」(日本テレビ系)の司会を萩本欽一とともに務めるようになったのは、今から18年前。いずれ、香取が禅譲されることになるのかもしれない。

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「忍たま乱太郎」という奇跡