一般の患者であれば、炎症が治まるのを待ち、日常生活をする中で困るかどうかをみてから、手術をするかを判断してもかまいません。手術をするかどうかは、その人の自覚症状、生活状況や活動性、靱帯の損傷の程度、年齢などをみて判断します。

 スポーツをする人や、ひざ崩れ症状がひどく、ちょっと振り返っただけでも起こるような場合には、手術をするべきでしょう。ひざ崩れがくり返し起こると、軟骨が擦り減って、将来的に変形性膝(しつ)関節症になるリスクが高くなります。手術をすると、多少痛みが出たりする可能性もありますが、それを犠牲にしても靱帯をしっかりさせて関節の緩みをとることが第一優先となります。

 スポーツ選手では時間が経つと筋力が落ちてしまうため、術前リハビリの後、早め(受傷後1~3カ月以内)に手術がおこなわれます。術後は安静期間を経て、リハビリをおこないます。通常、移植した靱帯の組織が定着するまで1年近くかかります。再断裂しないよう、運動の許可がでるまでは焦らずリハビリに努めることが重要です。

 一方、活動性が高くなく、自覚的な不安定性もそれほどない患者の場合は、手術をせずに、リハビリによる保存療法をおこなって、筋力をつけることによってひざの安定性を改善します。

 スポーツ選手であってもひざにかかる負担が少ない競技種目、たとえばアーチェリーやカーリングなどの選手なら、手術をしない選択肢もあるでしょう。また、子どもの場合は、すぐに手術すると骨の成長点である骨端線を傷めるリスクがあるので、保存療法をして成長を待ってから、慎重に手術の実施時期を決めることもあります。

 高齢者ですでに関節の変形があると、靱帯を手術しても痛みが取れない場合もあるため、医師と相談のうえ保存療法をすすめられる場合もあります。保存療法を続ける場合には、ひざ関節が緩い状態のまま使うことで変形が進行することもあるため、1年に1回は経過観察をすることが必要です。

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アキレス腱断裂は切れたままにはしておけない