白石、吉田は小柄でいかにも守備の人という選手だが、そのイメージを大きく変えたのが豊田だ。高校卒1年目から西鉄でショートのレギュラーとなると、いきなり27本塁打をマークして新人王を獲得。プロ入り4年目の1956年には史上初となるショートでの首位打者も獲得している。1960年代に南海で活躍した小池もシーズン二桁本塁打を4度マークするなどパンチ力はあったが169cmと小柄であり、大型でパワーのあるショートという意味ではやはり豊田がパイオニアと言えるだろう。

 1980年代に一世を風靡したのが高橋だ。プロ入り4年目にレギュラーをつかむと、翌1979年にはいまだに日本記録である33試合連続安打をマーク。抜群の脚力で3度の盗塁王をマークし、また左右両打席から長打を放つバッティングで、広島黄金時代のリードオフマンとして活躍した。豊田も通算215盗塁をマークする俊足だったが、更に万能タイプのショートとして新時代を築いたと言えるだろう。

 90年代以降の上位ランクしている選手を見ると、吉田などの流れをくむ名手タイプとしては井端、豊田のような強打者タイプは坂本、高橋のような万能タイプは石井、鳥谷、松井という分類になりそうだ。

 上位の顔ぶれからは意外な共通点が見えてきた。それはアマチュア時代、投手を経験してきた選手が多いということだ。まず歴代1位の石井は投手としてプロ入りしており、プロ一年目には一軍で勝利投手にもなっている。鳥谷も高校時代はショートと投手を兼任しており、3年夏に出場した甲子園では140キロを超えるスピードを披露した。高橋と松井の二人は野手に転向することが前提でのプロ入りだったが、高校時代はともにエースとしてプレーしている。

 坂本も高校ではショートだったが、中学までは投手としてもマウンドに上がっている。日本では能力の高い選手がまず投手をやるというケースが多いが、彼らはまさにその例に当てはまっていると言えるだろう。またショートとしてのプレーを考えた時に、守備範囲の衰えなどはポジショニングや判断で補うことはできるが、やはり肩の衰えは致命的になることが多い。そういう意味でも投手としても速いボールを投げられる肩の強さというのは、長くショートを守るうえでプラスになっていると言えるだろう。そういう意味では現役の若手では根尾昂(中日)や宜保翔(オリックス)も、高校時代投手として活躍していただけに面白い存在だ。

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坂本は歴代最高のショートになれる?