二人目は秋山幸二の名を挙げたい。2002年に現役を引退し、2005年にソフトバンクの二軍監督に就任。王貞治監督の後を受けて、2009年から一軍監督を務め、6年間で3度のリーグ優勝、2度の日本一に導き、常勝軍団を作り上げた。普段は寡黙で発言も地味だったが、常に選手を守り、その中で松田宣浩や柳田悠岐を育てた手腕は見事だった。重圧や心労、妻の闘病(2014年に死去)など様々な理由があった中で2014年を最後に勇退したと言われているが、その最後のシーズンで日本一。監督通算勝利数の456勝は歴代トップ30に入らないが、勝率.553は落合博満監督に次ぐ歴代10位。間違いなく名将であり、もっと長く続けていれば、さらに勝利数を伸ばし、多くの選手を育て、今以上に評価されていたことだろう。

 決して成績的には優れなくても評価されるべき監督もいる。若松勉はその一人であろう。1993年にヤクルトの打撃コーチとして指導者生活をスタートさせ、野村克也監督の後を受けて1999年から7年間チームを率いた。野村時代が9年間でリーグ優勝4度、日本一3度に対して、リーグ優勝、日本一は2001年の1度のみ。しかし、 藤井秀悟や入来智に2ケタを勝たせ、青木宣親をブレークさせるなど、若手からベテランまで自主性を重んじ、その中で伸びた才能も多くあった。2001年の優勝監督インタビューで「ファンのみなさま、本当に、おめでとうございます!」と言い間違ってファンの爆笑をさらったエピソードも、若松監督の朗らかな人柄が表れている。

 最も大事なのは「勝てる監督」かどうか。しかし、それだけではない。どれだけ選手が育てられるか。そして長期政権を築けるかどうかも、名将の条件になる。令和の時代を迎えた今、新たな名将誕生を期待したい。