言っとくが、俺の足は大きい。30~32センチだ(メーカーによって多少の幅があるのだ)。俺の靴は、靴というより、ほぼ小舟だ。生まれた時の体重が4250キログラムだった俺は、あ、間違えた、キログラムではない。グラムだ。4250キログラムもあったら、それはもう人ではない。なんだろう。島だ。島はもう少し重いか。もう何が書きたいのか忘れちゃったじゃないか。

 書くことを忘れたついでに書くが、俺は顔の彫りの浅さにも定評がある。浅いにも程がある。壁だ。壁俳優と呼んで頂いても結構だ。嘘。やだ。やめて。壁俳優、わりと繊細なの。傷つくからやめて。

 ネガティブな状況だからこそ、明るいことを書こうと思ったら、己の身体のネガティブを披露してしまった訳だが、実際、もちろん大変な状況であるのは間違いないし、ほとんどネガティブに囲まれてると言ってもいいかもしれないが、ネガティブなことオンリーという訳でもない気がする。

 これを機に「何もしない贅沢を味わおう」と、誰かが言っていたが、その通りかもしれない。いや応なしに家にいなければいけない、こんな状態は50年の人生で初めてだ。この体験を味わってやる、くらいの気概も必要かもしれない(もちろん、そんな悠長なことを言っている場合でない方々もいることは百も承知だが)。

 最近、息子と相撲をやるのが流行っている。あまりウジウジせず、これを書き終わったら、息子と相撲を取ろう。4250キログラムの父を倒すのは容易ではないだろうが。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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