山本は恩返しのアーチだったが、恩返しのマウンドという意味では、盛田幸妃の姿を忘れられない。88年にドラフト1位で横浜大洋に入団すると、自慢の剛速球を武器に主にリリーバーとして活躍。大魔神・佐々木主浩とともに「ダブルストッパー」と呼ばれた時期もあった。病魔が襲ったのは、トレードで近鉄に移籍した1998年のこと。開幕から好投を続けながら次第に体に違和感を覚えると、検査の結果、脳腫瘍と診断され、同年9月に摘出手術を受けた。

 再びプロとしてマウンドに上ることは不可能ともされたが、驚異的な回復力と強靭な精神力で復帰し、翌1999年のシーズン最終戦で一軍登板を果たして見せた。さらに2001年には34試合に登板してチームのリーグ優勝にも貢献し、カムバック賞を受賞。引退後、脳腫瘍の再発と転移を繰り返して2015年10月に45歳の若さで他界したことが悔やまれるが。間違いなく多くの者に感動を与え、紛れもなく恩返しを尽くしたプレイヤーだと言えるだろう。

 そしてもう一人。今季の松坂大輔にも注目だ。すでに拾ってくれた中日には2018年に恩返しの6勝をマークしたが、14年ぶりの古巣復帰を叶えてくれた西武に対する回答は、これからだ。今年9月に40歳となる平成の怪物が見せる意地と感謝のピッチングに注目し、期待したいところ。是非とも、罠から助けられた鶴を上回る、最高の恩返しを見せてもらいたい。