ガイドラインで推奨されている治療法は、難聴がある場合には補聴器を装用することだ。不足している音が脳に届くことで脳の過剰な興奮を抑える効果や、耳の聞こえがよくなることで、耳鳴りの音が気にならなくなる効果が期待できる。

「補聴器が不要な軽度難聴では、専用の機器で耳鳴りより少し小さい音や環境音楽を流すことで耳鳴りを減らす『音響療法』もすすめられます」(神崎医師)

 ほかに、耳鳴りのメカニズムなどを正しく理解することで苦痛を軽減する「教育的カウンセリング」や、耳鳴りへの考え方を変える「認知行動療法」なども有用とされている。教育的カウンセリングでは、耳鳴りが発生するメカニズムを、患者が正しく理解することをめざす。とくに耳鳴りに対する不安や苦痛が大きい患者には有効とされ、このカウンセリングだけで症状が改善することもあるという。

 難聴の治療に補聴器装用のためのトレーニング期間が必要なのと同じく、耳鳴りの治療にも時間がかかる。神崎医師はこう話す。

「耳鳴りの治療では、効果が得られるまでに短くても3カ月、半年から2年ほどかかります。何回か通っただけで治らないからとあきらめてしまっては、いつまでも改善しません。治るためには根気強く通い続けることが大事であることも理解する必要があります」

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、補聴器外来の有無、本記事でも紹介した耳鳴り治療の一つ・音響療法の有無がわかる病院リストなども掲載しているので参考にしてほしい。(文・出村真理子)

≪取材した医師≫
慶応義塾大学病院 耳鼻咽喉科 神崎晶医師
杉内医院 院長 杉内智子医師