医療情報の質というのが、いわゆるエビデンスと呼ばれるものです。信頼度の高いものから低いものまで分類が可能です。

 エビデンスという言葉を知っている一般の方でも誤解しているのが、エビデンスは”ある”か”ない”かだけでなく、”高い”か”低い”かがあるということです。大ざっぱに言ってしまえば、被験者の多い臨床試験はエビデンスレベルが高い部類に含まれます。一方、専門家の個人的な意見はエビデンスレベルが低い。

 新型コロナウイルス感染症の報道が連日続いています。テレビやインターネットではデマが拡散し、トイレットペーパーやティッシュペーパーは品薄になりました。こういった状況下では「正しく恐れる」ことが重要ですが、一般の方にとってはなにが正しいか判断するのが難しいと思います。

 改めて調べてみると、新型コロナウイルス感染症に関してはエビデンスレベルの高い論文が次から次へと出はじめています。今の時期に、エビデンスレベルの低い個人的な意見を言う専門家には注意が必要でしょう。誠実な専門家であれば、その医療情報がどの研究に基づいたものか言及してくれます。情報の出どころ、つまり出典を明らかとした医療情報であるかどうかをまずは見るようにしてください。

 この機会に一般の方も賢くなって、「その医療情報の出典はなんですか?」と専門家に聞けるようになると、マスコミやインターネットでの質の低い医療情報も減っていくのではないでしょうか。デマに惑わされず、質の高い医療情報をもとに「正しく恐れる」ためには、医療リテラシーを身につけることも大事です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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