しかし、まあ思い起こしてみますと、「刑事B」とか「課長3」とかの役を多くやってた30代の頃は、転がる余裕もなかった気がします。とにかく世の中に出ねば、俺の面白さを皆さんに分かってもらわねば、ということに躍起になってたような気がします。

 もちろん、その躍起になっていた部分は、今も時に必要ではあります。半ば強引であっても、自分で点を取りに行くみたいなことは、必要な素養だと思っています。

 ただ、いつからか、共演者やスタッフから「貰う」方が楽だし、単純に愉しいと思えるようになりました。もちろん、一口に「貰う」といっても、良い貰い方、悪い貰い方があるので、貰うにも本人の感性が大事になってきますが。

 わちゃちゃ。前回に続き、また真面目風味な話になっちゃった。風味ってなんだ。根が真面目なんだよ俺は。そしてホント、現在撮影真っただ中で、芝居以外で書くこと思いつかんのよ。

 まあ、考えてみると、25年間、僕は妻の手のひらで転がっております。人の手のひらで転がるのはお手のものです。浦安鉄筋家族、4月10日から放送スタートです。転がりまくる僕を、どうぞお楽しみくださいね。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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