しかしこういった努力がいま、入国手続きの足を引っ張っている。新型コロナウイルスの感染拡大のためだ。入国時には、「過去2週間、どこにいたか」と何回も聞かれる。入国審査レベルではわかるのだろうが、水際対策は飛行機を降りたときや、通路の途中でも行われる。パスポートにスランプがあれば目で確かめることができるのだが。

 先日、タイを出国したが、指の指紋のスキャンも一時的にやめていた。ウイルスが指から指へ移ってしまう可能性があるからだ。「今度こそは」と何回も手を洗っていたのだが……。

 世界の空港は、増える渡航者の出入国審査をスムーズに行う努力を重ねてきた。しかし新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大は、国を越えた人々の往来が一因でもある。なかなかうまくいかない。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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