●ハワイにもある平等院

 忘れがちになるが、鳳凰堂の姿は日本で暮らしていればほぼ毎日見ている。10円玉の裏側に描かれているからだ。また、1万円札の裏側にもお堂の上に乗っている鳳凰の姿が写されている。日本人にとって宝物のようなその姿は、遠くハワイへ移住した人たちにとっても忘れ得ぬものらしく、「平等院テンプル」がオアフ島のカネオヘにあるValley of the Temples Memorial Park内に、日本移民100周年の記念として1968年に建立された。1/2サイズのモデルではあるが、正面の池に映る姿や堂内の阿弥陀如来坐像などは、本家に及びはしないまでも美しい姿を醸している。

●九品往生のお迎え

 平等院の国宝仏の中に52体の「雲中供養菩薩像」がある。お堂の中の壁に飾られている仏像で(一部は博物館に)、楽器を演奏していたり舞を見せていたり華やかな様子の仏さまだが、これは死者を迎えにくる仏を表したものではないかと考えられている。生前の行いにより、往生に際し9種の浄土があることを「九品(くほん)」というが、死ぬ瞬間にこれら菩薩のお迎えの様子から自分がどのランクにいるのかがわかるという「九品来迎」の図が各地のお寺にも残されている。少し説明すると、人の等級を上品(じょうぼん)・中品(ちゅうぼん)・下品(げぼん)の3品にわけ、それぞれがさらに上生(じょうしょう)・中生・下生に分けられる。つまり一番上が「上品上生」、一番下が「下品下生」となる。上品や下品という言葉の元である。

●お面かぶりも延期に

 上品上生の人が往生する際には、菩薩が笛や鼓を打ち鳴らし、祈りや踊り、物品を持って阿弥陀とともに迎えに来るが、下品下生の人は菩薩の随行はなく行き先の不安が増すのである。これが来世や浄土に対する希望となって、寺院や仏が建立されていく力となった。東京には「九品仏」という駅があるが、これは浄真寺という9体の阿弥陀如来を祭ることに由来するこのお寺の俗名に由来する。上品上生から下品下生までを担当する阿弥陀さまが鎮座し、3年に1度「お面かぶり(二十五菩薩来迎会)」という「九品来迎」を体現したお祭りが行われている。本来は今年(令和2年)が開催年にあたるのだが、コロナウイルスの影響から来年に延期となってしまった。

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